創風社では、今『ファッション産業論』が完成に向かいつつあります。先日、先生から渡された原稿をもとに、コンピューター上で校正作業を進めている最中です。この本をつくりながら、普段、ブランド品などほとんど関心をもたない私も、少しずつ関心を深めていきました。先日見た、ルイ・ヴィトンの広告によると、ルイ・ヴィトンは全世界の売り上げの3分の1が日本であると、記されていました。なぜ、ブランド品は、ここまで、日本市場を支配できるのでしょう。ブランド品だけなく、低価格のアジアからのアパレル商品の輸入も拡大しています。そんな中で、日本の繊維産業は、いかに生き残っていくのか。このような内容がこの本の中心テーマなのではないかと現段階では自分なりにそう捉えています。この本の著者の富澤先生は、過去22年間繊維一筋に研究をしていますが、この本はその最新版です。経済学に『美』の視点を入れたユニークな
内容です。この本の出版をきっかけに富澤先生が、どんな時代に、どのような社会的課題に対し、どのような経済学的処方箋をだそうとしてきたのか、自分なりに詳しく確認したいと思っています。
先生は創風社で、『苦悩するアメリカの産業』(共著)、『アメリカ南部の工業化』、『構造調整の産業分析』などで繊維に関する原稿を書いています。特に『構造調整の産業分析』は、以前にサービス論に関する日記で触れたように、経済学と政治、経済の接点を強く確認できる内容だと感じました。時間をみつけて精読したいとおもっています。
8/27のサービス論の日記の続きになりますが、先日、千田が櫛田氏の『サービスと労働力の生産』の広告用の文章を探し、
「はしがき」に次のような文章を見つけました。
「労働力商品とサービス商品についての本書のこうした捉え方は,賃金労働者を前提にした場合,サービス商品に投入された社会的労働は,消費活動の媒介により使用価値的にも価値的にも労働力商品の構成要素を成すという結論を導きだす。これは,サービス部門の発展すなわちサービス経済化は不生産部門の拡大であり,それを資本制経済の腐朽性あるいは寄生性の現れとして捉えるかつての支配的潮流の見地とはまったく異なっている。まず,サービス部門の拡大自体が物質的財貨の生産部門とは異なる新しい社会的労働部門そして新しい商品生産部門の発展であり,これを経済発展段階論として意味あるものとする。また,サービス経済化は,賃金労働者の無知の克服,知的向上,健康の維持・回復,労働可能年齢の延長等により労働力商品の質的発展を促し,一定の限界はあるにせよ社会の文明化作用として働くとする。こうした議論の詳細については今後の研究の進展を待たねばならないが,本書が,こうした経済発展史観に理論的基礎を与えるものとなれば幸である。」
これが、櫛田氏の「サービス労働とは何か」に関する見識のポイントであると思われ、氏の見識と金子氏、齋藤氏の見識、学術会議や政治、経済との結びつきをあらためて、自分なりに捉えなおしたいと思いました。