脳性麻痺の整形外科手術の問題点はどこにあるか

02年9月18日 千田顕史

 02年5月11日第29回日本脳性麻痺研究会の討論で若い整形外科医が質問をしていました。「どの筋肉をどのくらい伸ばしたらいいのかを、どのように決めていくのか」と。
 整形外科手術の問題点はここにあります。脳性麻痺と診断されると、多くの子どもは訓練中心の病院を紹介され、大部分はそこに行くことになります。今までは、「訓練で治す」という考え方が中心だったのですが、「訓練で痙性は治せない。手術が必要」ということが、学会の常識になりつつあります。訓練中心の今までの病院は「手術で痙性をとる」という研究はあまりしないで、訓練中心でやってきました。学会が手術が必要となったから、手術をしましょう。ではあまりに危険すぎます。
 股関節には11本の筋肉があります。どの筋肉をどういう手法でどのくらい切るかは専門研究に裏付けされた理論と手術の経験が必要で、それに基づかない手術は機能が悪くなります。私は3年前に水戸で開かれた脳性麻痺の外科研究会に参加しました。おどろいたことは、脳性麻痺で有名な訓練中心の病院からは手術の研究発表はないのです。02年のリハビリ学会も同じでした。手術を目指すなら、手術内容の医学論文を発表し、公開の場で討論してほしい。患者は異なった整形外科の方法の診察も受け、セカンドオピニオンを求めて、手術を受ける前に、手術の内容を考えてほしい。そういうつみ重ねの中でしか医療の進歩はないように思います。