ド・レフュス事件とエミール・ゾラ |
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フランス陸軍参謀本部のユダヤ人アルフレッド・ドレフュス大尉が、ドイツのスパイ容疑で逮 捕され、有罪判決を受けた。その彼の無罪が確定したのは、12年後の1906年7月である。今なぜドレフュス事件なのか。そして文豪エミール・ゾラはなぜドレフュスの無罪のために闘ったのか。 ゾラの妻 先ほどの若い方は、どんなご用でいらしたの? ゾラ ベルナール=ラザールといって、以前には私のことを酷評していた文芸評論家だがね。3年前にドイツ軍のスパイとして逮捕され、軍法会議で有罪になったユダヤ人将校アルフレッド ・ドレフュスが、じつは無実だというんだ。それを自分は、筆跡鑑定の専門家たちの協力で証明したから、この著述を読んでほしいといって置いていったよ。ぜひ世論に訴えてほしいってね。 妻 それで、どうなさるおつもり? やっぱり一肌お脱ぎになるの? ゾラ いやぁ、面倒な気がするね。次の小説にとりかかりたいしね。 妻 でも、先だって「ユダヤ人のために」をお書きになったあなたですもの。ユダヤ人のドレフュス大尉が無実だとしたら、ドレフュスのために黙ってはいられないでしょう。 ゾラでもねぇ、さっきの青年の話を聞いても、どうもスッキリしない。元大尉の家族は金満家だそうで、金の力で大尉を流刑地から救出しようとしている、という噂もあるしねぇ。もっと 正々堂々とやればいいのに。もちろん軍法会議はウサン臭いよ。とくに筆跡鑑定はいい加減だったようだね。(本文より) 目 次 |