本書の執筆中に,動向が注目されていたロシアの批准がほぼ確定し,「京都議定書」 の発効用件が整い,2005年前半頃には発効する見通しになった。「京都議定書」から離脱している最大の温室効果ガス発生国,アメリカへの働きかけという大きな課題は残っているものの,いよいよ本格的に世界は温暖化防止に向けて動き出す。各国国内での削減努力はもちろんの事,「京都議定書」を補完する制度としての,排出権取引やCDM(クリーン開発メカニズム),JI(共同実施)の動きも活発化するだろう。
本書はそのうちのCDMについて述べたものである。…………第1章では,気象,環境測定データ及びエネルギー消費などの統計データを解析し,化石エネルギーの多量使用に由来する地球温暖化及びその防止対策について私見を述べる。第2章では,京都議定書の採択の経緯及び補完手段として導入されたCDMの性質を巡り,日本及び中国の温室効果ガス排出要因及び削減対策を分析すると共に両国間でのCDMプロジェクト実施の可能性を示唆する。第3章では,山西省現地調査及び統計データに基づき,山西省の大気汚染の実態と汚染源及び大気環境の改善策を考察する。第4章では,山西省のエネルギーの生産及び消費の実態を解明し,石炭消費量が最も多いコークス製造業(石炭消費量の約半分)及び石炭火力発電所(石炭消費量の4分の1)のエネルギー利用効率の現状及び省エネルギーの潜在力を推定する。第5章では,山西省の環境改善対策の一つであるCDM導入の試みとして,山西省安泰集団の新設コークス製造工場にCDMを導入することでCDQ(コークス乾式消火)設備を増設させる可能性を検討すると同時に山西省での普及効果を考察する。(「はじめに」より)
第 1 章 地球温暖化とその原因
1.1 地表温度
1.2 地球温暖化
1.3 化石燃料による二酸化炭素排出量の影響要因
1.4 二酸化炭素排出量の削減策
第 2 章 京都議定書とクリーン開発メカニズム
2.1 京都議定書
2.2 日本における地球温暖化対策
2.3 中国の温室効果ガス排出抑制
2.4 日中間のCDM実施の可能性
第 3 章 山西省の大気環境汚染
3.1 山西省環境調査の実施
3.2 山西省の概況
3.3 山西省における大気環境汚染の実態
3.4 山西省における大気汚染の原因
第 4 章 山西省の省エネルギー潜在力
4.1 山西省のエネルギー生産と消費
4.2 コークス製造業の省エネルギー潜在力の推定
4.3 火力発電の省エネルギー潜在力の推定
第 5 章 CDM導入による安泰集団CDQの増設
5.1 プロジェクトの構成
5.2 プロジェクトによるGHG削減量
5.3 プロジェクトの効果分析
5.4 本プロジェクトの収益性予測
終章 本書のまとめ
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