ドイツ観念論と自然哲学 |
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自然哲学とはまさに近代哲学の中心線に位置しながら、19世紀後半以来の自然科学の隆盛とそれに対応するカント的認識論的枠組みに立つ科学哲学の勃興の中で忘れ去られてきた。今日、主観−客観対立、近代の超克などと喧伝される中で自然哲学こそが実にその可能性と必然性の道筋を呈示していたのである。自然哲学こそが近代哲学の自我論から出てそれを乗り越え、存在論として自然そのものと人間との関係との必然的な捉え返しを示してきたのである。自然哲学を今日再検討し、その試みの成功と挫折を明らかにしておくことは今日我々が直面している問題に対して一見迂遠な道のように見えて、じつは実り豊かな展望を呈示することにつながるだろう。 自然哲学は古くはギリシア古代にまで遡り、中世を経て、ルネサンスに至り、近代の自然哲学、取り分けドイツ観念論の中で発展させられた大鉱脈であるが、これまで余りにも振り返られることが少なかった。世紀末の今日、近代の到達点であり、現代の出発点に位置するこのドイツ観念論の中で培われた自然哲学の中には、まだ発掘されていない大鉱脈を発見することが可能であろう。もう一度その大鉱脈を掘り返し、ドイツ観念論の基本的視座を再検討しておくことが必要であろう。本書は自然哲学の研究を目指す若手研究者で組織された自然哲学研究会の成果を示す、第1論文集である。 内容構成 |