目次
著者紹介 1950年生れ、東京大学教育学部大学院卒
本書より――「絵本の世界」という授業をしようと思いついたのは次のような理由でした。私自身は幼少の頃親からたくさん昔話を聞かされて育った記憶がありますが、絵本にはほとんどふれたことがありませんでした。しかし、結婚した相手が大変絵本好きな人で、絵本がたくさんある環境で暮らすことになりました。そして、すぐに次々と生まれてきた三人(現在は四人)の男の子たちに、父親として毎日・毎晩求めに応じて絵本を読み続けてきました。その中で、私自身絵本のすばらしさにしびれてしまったのです。その後、絵本のすばらしさにふれた身としておりおりの講演や大学の授業で絵本の読み聞かせを少しずつ行なってきました。当初大人や学生に絵本を読み聞かせていいものかどうか、多少の戸惑いがありましたが、やってみると意外に受けがよいのです。ただ、私自身感動した作品を紹介するため、当初は絵本を読んでる最中、例えば、『なっちゃんとぼく』では交通事故のために重度の障害者になってしまった教え子のTさんのことを思い出し、感極まり涙があふれて読めないことも何回かありました。そして、いよいよ本格的に「絵本の世界」を開講することになりました。しかし、ここでもある戸惑いは消えませんでした。それは、学生に紹介したい絵本はたくさんあるのですが、大学の授業として開講するうえでのスタイルにややとらわれたのです。「絵本の世界」と名づけた以上、やはり、(絵本)作品論や(絵本)作家論が多少できなくてはいけないのではないかというこだわりです。そのようなこだわりも、松居直さん(絵本出版の老舗の一つである福音館会長)の『絵本の現在こどもの未来』の以下に紹介する文章に出会ってスーッと消え、よしやってみようと思うことができました。……
目次
序章 なぜ大学で「絵本の世界」か
1. 私の教養教育実践のねらい 2. 「絵本の世界」を開講した理由
3. 「絵本の世界」の授業の課題
第1部 「絵本の世界」の実践
第1章 障害児(者)問題
1 ねらい・目的
2 問題の提起と学生の障害児・者観
3 絵本の紹介と意見の深まり 絵本『さっちゃんのまほうの手』
『なっちゃんとぼく』『どんぐりの家』『はせがわくんきらいや』
『わたしたちのトビアス』
第2章 いじめ問題
1 ねらい・目的
2 いじめ自殺問題をめぐって
3 いじめ問題に関する絵本を読んで 絵本『わたしのいもうと』『みのるくん』
『わたしのせいじゃない』
4 学生の意見と検討課題 絵本『ぼくをたすけて』『ひろしくん』
5 他のいじめ関連の絵本の紹介絵本『しらんぷり』『いじめかたおしえます』
『よか、よか、プーすけ』
第3章 不登校問題
1 はじめに一ねらい・目的
2 ふたつの手記をめぐって
3 絵本を読んで 絵本『うさぎの島』『いやといったピエロ』
『いつもちこくのおとこのこ』『いいこになれっていわないで』
『――わだけはんたいにあるいたら――……』『星空のシグナル』
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