「ドイツ・イデオロギー」の射程 |
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東欧の激変のなかで、社会主義そのものが問われている。マルクスのいう社会主義は、今日、何らの生命をももたないのであろうか。マルクス主義はもはや過去の遺産にすぎないのであろうか。本書は、唯物史観が基本的に確立された『ドイツ・イデオロギー』の思想を解明することによって、マルクスの思想の今日的生命力を照射することを狙ったものである。 『ドイツ・イデオロギー』研究にかんしては、すでに、広松渉、望月清司、細谷昂ら、先達の研究がある。本書はそれらの研究も視野におさめながら、第1章「フォイエルバッハ」だけではなく、第2章「聖ブルーノ」、第3章「聖マックス」をも含めた『ドイツ・イデオロギー』の全体のなかで、マルクスの思想を浮かび上がらせようとした、新しいマルクス像を構築しようとする集団的労作である。 ≪主 要 目 次≫ 序章『ドイツ・イデオロギー』研究の現在(岩佐・渡辺) 第1編 1 第1巻第1g「フォイエルバッハ」の文献問題(小林一穂――東北大学) 2 マルクスのフォイエルバッハ批判の意味(渡辺憲正――関東学院大学) 3 宗教批判と自己意識(木村 博――法政大学) 4 人間観の確立とシュテイルナー批判(尾崎恭一――関束学園大学) 第2編 1 人間の社会とその歴史の唯物論的な基礎づけ(岩佐 茂――一橋大学) 2 「階級的個人」の諸相と諸個人(秋葉節夫――広島大学) 3 意識と意識の転倒としてのイデオロギー(稲生 勝――岐阜大学) 4 物象化論――「理念の自立」(田島慶吾――静岡大学) 5 「国家=幻想的共同体」論(小林一穂) 6 コミュニズム論における自己否定の論理(竹内章郎――岐阜大学) |