佐久間 孝正(立教大学)編著


現代の社会学史


A判上製 356P 本体2500円 

 本書は、現在社会学を学んでいる人、あるいはこれから学ぼうとしている人を念頭に代表的な何人かの社会学者をとりあげて、その方法や思想を紹介しようとするものである。
 社会学を講義していてよく聞かれる疑問の一つに、社会学は対象領域が広大で固有の領域や方法があるのかないのかわからない、あるいは他の隣接科学との相違も不明確であるというものがある。経済学や法学、心理学にはそれぞれ固有の対象があって、その方法もわかるが、どうも社会学はそれらの科学が取り残した残滓を扱っているだけで、独自の領域も方法もないのではないのか、結局、「雑学」めいたものではないのかというのである。・・・・・・・・
 そこで本書では、まずは社会学が形成きれた原点に立ちもどって、先学たちの意図した方法なり原理を探ってみることにしたい。そしてそこから今度は、その後の代表的な社会学者を何人か取りあげ、先学たちの遺産を自分たちが生きた社会的現実とどうかかわらせながら豊かなものとしていったのかをみることにしたい。そうすれば、あいまいだとされた社会学にも他の科学には取って代われない固有の対象があって、かつまたその方法や原理も時代とともに発展してきていることがわかるであろう。

目  次

はじめに
I スミス、ヘーゲル――社会科学的思考の源流
 一 近代社会認識の夜明け
  1 社会科学の祖としてのアダム・スミス
  2 アダム・スミスの 「道徳哲学」の課題
  3 コミュニケーション論としての「同感」概念
  4 『国富論』の世界 −「商業社会」としての近代社会理論
  5 「道徳哲学」から社会科学としての経済学へ
  6 商品交換関係としての「コミュニケーション」関係の特質
  7 マルクスによるスミスの「国民経済学」批判
 二 ヘーゲル――市民社会の総体把握
  1 おくれたドイツとヘーゲル哲学の課題
  2 ヘーゲルの人間観
  3 ヘーゲルの学問的「レアリスムス」―ヘーゲル哲学とプロシア国家
  4 自由論における「レアリスムス」――自然必然性・労働(陶冶)・自由
  5 ヘーゲルの近代社会の総体把握の方法
  6 「欲求の体系」論としての「市民社会」理論
  7 「福祉行政」と「職業団体」
  8 ヘーゲルの「民主性国家論」批判における二元論

 カール・マルクス――市民社会止揚の社会理論
 1 哲学から市民社会論へ
 2「国家の立場」から「客観的関係」へ
 3 市民社会と国家の関係
 4 市民社会概念と疎外
 5 政治的解放から人間的解放へ
 6 宗教批判から行進ドイツ解放の理論へ
 7 プロレタリアートの発見と社会主義
 8 疎外された労働(『経・哲(第1)草稿』)
 9 社会的相互依存=補完関係(「ミル評註」と『経・哲(第3)草稿』)
 10 近代市民社会解剖の方法と唯物史観
 11 『経済学批判』序言の「定式化」

。 サン―シモン、コント、ディユルケム――社会の再組織化と人間連帯の社会学
 一 サン―シモンとコント――フランス社会学の源流
  1 サンーシモン
  2 コント
 二 ディユルケム――社会主義の確立
  1 『社会分業論』の問題――「分業」の起源を求めて
  2 『方法の規準』の世界――社会学の対象領域と方法の確定
  3 アノミー研究の古典としての『自殺論』
  4 新しい「連帯」としての「職業集団」
  5 社会を「社会」たらしめるもの『宗教生活の原初形態』の世界
  6 デュルケムの社会主義論
  7 デュルケム理論と現代

IV ジンメル、ウェーバー ー 非マルクス主義社会学の確立
 一 ジンメル――形式社会学の創始者・
  1 ジンメルの生きた時代
  2 ジンメル社会学の課題と方法
  3 ジンメルの社会学史観と「形式」
  4 ジンメル社会学と現代社会
 二 ウェーバー――理解社会学の始祖
  1 ウェーバーとその社会
  2 ウェーバーの社会科学方法論
  3 ウェーバーにおける社会認識
  4 ウェーバーの歴史認識と現代 − マルクスとの関わりで

V  G・H・ミードー ―― 共同社会における主体性探求の社会学
 一 シカゴ、およびシカゴ大学のなかのミード
 二 自我の主体的性格の解明 二 ミードの中心的な課題
  l 社会心理学の彫琢
  2 自我の発生論
  3 主体的な自我としてのI
 三 課題、今日に生きる思想
  l 解決すべき課題
  2 今日に生きる思想

VI パーソソズ、マートン―― 機能主義社会学の開花
 一 夕ルコット・パーソンズー 「不治の理論病患者」「知的巨人」▲
  l 現代アメリカ社会学史と私たち
  2 「最後のピューリタン」としてのパーソンズ
  3 ハーヴァードの学際的環境とパーソンズ
  4 初期パーソンズ――秩序問題と主意主義的行為理論
  5 パーソンズの認識論
  6 中期パーソンズの行為論――行為者――状況図式へ
  7 社会システムの構造−機能分析
  8 パーソンズの業績解釈の問題
 二 マートン洒脱な「ミスター・ソシオロジー」
  1 経歴と業績
  2 土台としてのプラグマティズム
  3 科学社会学の創始・
  4 「中範囲の理論」提唱
  5 機能分析の系統的整理・
  6 社会構造と逸脱およびアノミー
  7 マートンの業績の位置づけ・
VII ルーマン、ハーバーマス社会理論としてのコミュニケーション理論
 一 戦後ドイツ社会学
 二 ハーバーマスとルーマンのめざすもの
 三 ハーバーマスコミュニケーション行為の理論
  1 パーソンズからウェーバーを超えてマルクスへ
  2 コミュニケーション行為
  3 生活世界と「システム」
  4 コミュニケーション・メディア
 四 ルーマン社会システム理論の新しい地平
  1 理論プログラム
  2 システムのセルフレファレンス
  3 コミュニケーション
  4 システムの構成連関とメディア
 五 結びにかえて
VIII ダニエル・ベル
政治による支配と管理の社会学
  1 ベルの思想
  2 「イデオロギーの終焉」諭
  3 「脱工業社会」の理論
  4 産業社会と文化
IX 日本の社会学
社会学の受容過程と日本社会学の形成………233
 1 社会学の受容過程
 2 戦前期における日本社会学の形成
 3 戦後の日本社会学
あとがき

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