ジョルジュ・ソレル 著
稲葉三千男(東久留米市長、東京大学名誉教授)訳

ドレフュス革命

46判 上製 200ぺ一ジ 1500円   

 ドレフュス革命と私がいうとき、軍法会議により二度にわたって有罪とされたドレフュスの名誉回復が、フランスの伝統をこんなにも大きく動揺させたあげくでなければ実現され得なかったことだけや、以前とくらべてはっきり違う特徴を備えた新時代に私たちが歩み入ったことだけを、いおうと望んでいるのではない。そんなことはあまりにも明白な事実で、あえて言辞を弄する必要などないほどである。さらに私は、《事件の拡大》と呼ばれている現象に由来する変様を回想しようとだけ望んでいるのでもない。ドレフュス派は、自分らに予想外に強く抵抗する保守勢力に打ち勝つために、既成秩序一それまで共和国がそれへの断罪をくり返すだけで改革には着手しなかったので、保守派を不安にしたのに加えて、同盟者である共和派にも恐怖を与えずにはおかなかった一にずっと長らく不平を抱いてきた人民大衆に、協力の呼びかけをしなければならなかった。また、こういう不平不満を、社会法則に則って鎮める努力もしなければならなかった。最近のフランスの激動と過去におけるフランスの政治革命とのあいだに存する共通性に注意を払うよう、私は特に望んでいる。フランス社会の将来をより良く理解するうえでも、また過去をより良く分析するうえでも、この共通性の認識は有効なはずである。(本文より)

目次

第二版のための序文

第1章 政治革命の一般的な構造一クーデター
   ――成果の季節――成果の正当化に役立つ理論
第2章 自認した動機と現実の動機
   ――フランシス・ド・プレサンセ――社交界の人びと、
    学者、文学者――ゾラの理屈
第3章 革命の過程での愚劣な現象――ドレフュス事件の過程で起こった
    数え切れぬほどの愚劣さ――ドレフュス派の滑稽さの代表者としてのゾラ
第4章 ワルデック=ルソー内閣がかき立てた疑惑
   ――彼が受け入れねばならなかった妥協――隅々まで広がった腐敗と選挙の前準備
第5章 ドレフュス裁判が生み出した難問――特赦のための取引
   ――1903年における事件の再演――司法官の権威矢墜
   ――1906年7月12日の判決
第6章 ドレフュス事件におけるカトリックの役割
   ――再審に対するカトリックの敵意の理由
   ――修道会によって吹き込まれた恐怖
   ――1901年法の適用――コンブとその宮廷
第7章 共和派貴族制――名門家族の傲慢――シュレル=ケストネル
   ――共和派貴族制に対する民主主義の反逆

訳者あとがき

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