この本は子どもの人権に関する私の講演の記録ともいうべきものです。本のねらいは三つあります。一つは小、中学生の子をもつ親が、子どもの多面的能力を生かすためにほ、地域の人や教職員と協力して子育てにあたる必要を、社会に実際に起きた事件をヒントにして述べているということです。二つめは、教職員は教育の専門家として父母と協力して子どもの学習権を最大限尊重する役割があることを、期待を込めて多少辛口で述べていることです。そして三つめほ、子どもがさまざまな事件を起こしたりしているのは、私たち大人がつくった社会の歪みであるとすれば、大人の責任で子どもが安心して暮らせる社会をつくるべきだということを提言していることです。(本書を読む人へより)
目次
本書を読む人へ
第一章 子どもの事件と大人の責任――子どもの人権を尊重するとは――
一 子どもの成長機会の変化
二 今日の子どもの生活環境と事件
三 社会の総合力で子どもの人権を護るにはどうしたらよいか
四 子どもの権利条約の尊重を
第二章 学校,家庭,地域の協力を求めて――教育懇談会五年のあゆみ――
一 はじめに
二 教育懇談会開催の動機について
三 問われている父親の役割
四 今日、父親の何が間題か
五 子どもが育つとは
六 「子育て宣言」について
七 「子育て宣言」と私
八 親子の会話こそ子どもの健全育成の道
九 おわりに
第三章 日本社会の病理としての「いじめ」事件の解決に向けて――地域と家庭の再生をめざして――
一 いじめをどうみるか
二 いじめは小,中学生に特有か
三 問われている戦後民主主義
四 高度成長のもたらしたもの
五 車とテレビ社会の出現と子どもへの影響
六 ファミコンとカラオケ文化の行くすえ
七 地域の再生を
八 親は子どもと学校のことをもっと知ろう
九 親は子育てに責任をもとう
第四章 世間の常識と学校・教職員の常識の異同――子どもの人権をめぐるトラブルとの関係で――
一 はじめに
二 何が問題か
三 子どもの意見表明権と学校
四 戦前の学校の慣習を引き継いだ戦後の学校
五 教職員と人権
六 学校における人権の衝突をめぐって
七 おわりに
第五章 子どもの人権と教職員の規範意識
一 子どもの権利条約の意義
1 子どもの権利条約の意義
2 子どもの権利条約と学校教育との関係
二 子どもたちの生活環境等の変化と教育への影響
1 多様であった子どもの成長の場
2 高度経済成長と子どもの世界の変化
三 家庭生活と子ども
1 家庭の教育力の低下
2 子どもの成長と家庭の役割の確認
3 学校・家庭・地域の協力を
四 子どもの人権と教職員の規範意識をめぐる問題
1 はじめに
2 戦前教育の残滓と戦後教育の不十分性
3 教職員団体の動向と子どもの人権をめぐる状況
4 管理教育と子どもの人権に関する教職員の規範意識
5 子どものためという教職員の規範意識の問題点
五 まとめ
1 大切なゆとり
2 教職員の規範意識の確立のために
第六章 いま,悩んでいる中学生諸君へのメッセージ
一 はじめに
二 「子育て宣言」の発表の意味
三 子どもたちのいじめと親の悲しみ
四 子どものときの思い出はいつまでも大切に
五 生きる勇気を
六 おわりに
第七章 少年期を大切にして子育てをしているか――尾崎豊の死の意味するもの――
一 はじめに
二 若者は何故「ありがとう」を発したか
三 「ありがとう」の気持ちをどう育てるか
第八章 スポーツを通じ,豊かな人間関係を――夫婦,親子,地域の視点から――
一 はじめに
二 地域大運動会の成功に向けて
三 私と地域スポーツのかかわり
四 スポーツを通じて私のめざしてきたもの
五 生涯スポーツの発展のために
六 おわりに
第九章 女子高生監禁殺人事件からみえること――問われている親の子育てのあり方――
一 問題の所在――事件が問うているもの
二 事件の概要と事件の社会的影響等
三 事件のもう一つの問題点
四 今日の家庭の実像と本件事件との関係
参考文献
出会いと別れ――あとがきにかえて
立読みのページ(09/12/25)
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