小林一穂(東北大学)編著

行為と時代認識の社会学


46判上製 220P 本体1500円 

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 われわれが生きている現代社会では、環境破壊や人口爆発、人権問題や民族紛争などが、地球規模に拡大してきている。また、管理社会化や高度大衆消費社会の成熟などの進行にともなって、人間疎外や社会病理的な現象が深刻化している。これらの問題は、近代社会がその発展の過程でみずから生み出したものだが、それらが今日にいたって「煮詰まり現象」をおこしているのだといえるだろう。もはや、問題の解決をいたずらに先送りすることはできない。ところが、こうした危機的な状況がせまっているにもかかわらず、みずからがかかえた諸問題を直視せずに、それへの当座の対応でことをすまそうとする風潮がはびこっているように思われる。・・・・・・
 それでは、「転換期」といわれる今日、われわれが直面している状況とは何か、そこでのわれわれの立ち居振る舞いはどのようなものになっでいるのか。本書は、このような、人々の日常的な行為にたちかえって現代という時代状況を解明しよう、という問題意識にたっている。だが、そこからただちに今日の社会状況や人々の日々の営みの分析へと向かうのではなく、まずはいったん近代という時代にたちかえり、それのもつ意味を考えていくことにした。そこで本書では、いくつかの社会学説をとりあげて、それぞれが直面した時代状況とそこでの社会行為のあり方がどのようにとらえられているのか、を追求している。

I 行為と関係の基底的把握
  − マルクス    小林一穂
 はじめに
 一 マルクスの課題と方法
  1 理念と現実
  2 対象把握の方法
 二 眼前の事実
  1 日常生活の様態
  2 日常生活における疎外現象
 三 人類史貫通的規定
  1 人間の存在と活動のあり方
  2 人間の主体性
 四 特殊歴史的形態
  1 近代ブルジョア社会のメカニズム
  2 人間活動と社会関係の物象化
  3 変革の展望
 おわりに
II 「官僚制」の時代認識と理解社会学
 一一ウェーバー     松井 克浩
 はじめに
 一 理解の方法と行為理論
  1 理念型の認識論
  2 理解の方法と行為理論
  3 ウェーバーの人間観と歴史観
 二 合理的近代人の形成と近代的支配の起源
  1 カルヴィニズムの宗教倫理
  2 近代的支配の形成史
 三 官僚制論とドイツ社会論
  1 近代官僚制の理念型
  2 ドイツ官僚制批判
 おわりに
III 「支配」と「文化」の社会学
  − ジンメル      菅野 仁
 一 ゲオルクジンメル ー 時代と人物像
 二 「形式社会学」と自由の問題
 三 形式社会学と「支配」の問題
 四 近代文化と分業貨幣
 五 まとめにかえて
 IV 共同とコミュニケーションのフィロソフィー
  ーGHミード     徳川 直人
 はじめに
 一 「実験室としての都市」
  1 社会ダーウィニズムの両義的機能
  2 宗教から哲学へ、そして人間の科学へ
  3 「行動の場」シカゴ
 二 「仮説」的態度
 三 「関係性」の論理朋
 四 ミードの「社会心理学」
  1 相互作用と「意味」
  2 コミュニケーションと自我の発達
 むすびにかえて

 V 日常的実践を貫くもの ー 象徴的権力と支配へのまなざし
 一一P・ブルデュー    小松田 儀貞 
 はじめに
 一 社会学的認識の革新
  1 ブルデュー社会学の形成
  2 主観主義と客観主義の対立
  3 日常的実践への回帰
 二 日常的実践の論理へ − ハビトゥスと場
  1 実践的論理解明への基礎視角
  2 ハビトゥス一個人のなかの社会
  3 場の論理−行為者と制度の存在論的共犯関係
 三 象徴的権力と支離〜社会的再生産の動態的過程
  1 社会的再生産と文化的再生産
  2 社会的再生産の動榛的過程

むすぴにかえて
あとがき

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