橋本輝彦(立命館大学教授)著

アメリカ経営史と企業革新

A5判 上製 204頁 本体2400円   

 本書はアメリカ企業経営の歴史的展開をたどるとともに、その文脈の中で1980年代以来のアメリカ企業の革新について考察することである。アメリカ経営史は企業が環境との関わりの中で、経営戦略や管理、組織において変化を生み出し、環境に働きかけてきた歴史である。経営戦略や管理、組織は個別企業の行動として現象するものであり、個別的な企業者性能とも関連している。しかしまた、経営戦略や管理、組織は時代、産業における大量的で特徴的な現象となる。それは経営戦略や管理、組織が市場や技術の変化との相互作用の中で形成、展開するものだからである。そして、それは規模の経営性や速度の経済性、さらには範囲の経済性を追求するものである。しかし、それは必ずしもすべてが経済合理性ないし効率性の追求であったわけではないし、既成の経営戦略や管理、組織が変化を拒むこともある。したがって、経営戦略や管理、組織は企業においても、社会的にも課題を生み出してきた。本書は、そうしたアメリカ経営史の流れの中で、80年代以来の企業経営の革新をとらえようと考える。

目次

第1章 会社支配構造の歴史的変化
 第1節 所有・支配の歴史的変化
 第2節 近年の所有構造、取締役会、利益還元政策
 第3節 会社の支配と意思決定

第2章 生産システム・工場管理と労使関係の形成と変化
 第1節 「アメリカ的生産方式」の形成と工場管理の近代化
 第2節 大量生産体制、フォード・システムの形成
 第3節 労働組合の抑圧から承認、ビジネス・ユニオニズムの形成
 第4節 戦後の大量生産体制と労使関係の変化

第3章 経営戦略の展開と管理組織の変化
 第1節 垂直統合化戦略
  1 大量流通・大量生産の発展
  2 1880年代の垂直統合化の開始
  3 19世紀末――20世紀初頭の水平的結合から垂直的統合化へ
  4 垂直的統合化の優位性
 第2節 多角化戦略と戦略事業計画の登場
  1 多角化戦略とその展開
  2 多角化戦略の要因と方法
  3 多角化と成果
  4 戦略事業計画の登場
 第3節 多国籍化戦略
  1 海外直接投資の増加
  2 多国籍企業の形成要因
  3 多国籍企業のもたらす問題
 第4節 コングロマリット、M&A戦略
  1 コングロマリット型合併とコングロマリット企業
  2 コングロマリットの形成要因
  3 コングロマリットの衰退
  4 1980年代のM&Aの激増とその要因
  5 1980年代のM&Aの意味するもの
 第5節 企業管理組織の展開
  1 職能部制組織の形成
  2 トップ・マネジメント機構の形成
  3 分権的事業部制の形成
  4 多国籍企業の組織
  5 企業管理組織の歴史的変化

第4章 国際競争力の低下・回復と企業革新
 第1節 国際産業競争力の低下とその要因
  1 競争力の低下の実態
  2 大量生産システムの限界
  3 マクロ経済要因
  4 経済上の問題
 第2節 アメリカ産業の復活過程
  1 経済の順調な拡大と産業の復活
  2 政府行動の役割増大
 第3節 企業経営の革新
  1 事業の再構築
  2 柔軟、迅速な生産方式の追求
  3 経営組織の改革
  4 グローバル化志向の高まりと戦略的提携
  5 機関投資家の発言と経営革新
 第4節 企業革新と経済社会
  1 労使関係の変化
  2 雇用増と実質所得の低下
  3 ベンチャービジネスの意義

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