本書「はしがき」より――日本の繊維産業は、どうなるのだろうか。かれこれ16年間繊維産業を研究してきた私にとって、繊維企業と繊維産地が現在直面している深刻な事態は,研究者である以前に、一市民として真剣に考えなければならない問題を提起しているように思えた。多くの企業、産地組合等が難局打開のために日々努力を重ねている姿を目の当たりにするにつけ、物知り顔で「衰退産業」のレッテルを貼って素通りするのは無責任であり、許されないと感じた。そうこうするうちに日本経済を支えてきた多くの機械系製造業でも同様の事態が急速に進行し始めた。繊維産業の来し方行く末は、他産業での近未来の構造調整――相互に重なり合うとはいえ、過剰設備対応と新しい価値・基準対応――の過程と結果を模範としてであれ、反面教師としてであれ極めて単純な形で提示しているように思えた。それゆえ、厳しい条件下、繊維企業・産地が何に苦悩し、国・自治体の政策はこれに十分対応しえているのか、を実態調査をベースに明らかにすることが、研究者として取り組まなければならない課題であると考えた。
目 次
第1編 構造論整下の産業、企業、雇業構造
序章
I章 産業組織の変化――大競争と提携――
1 大競争
2 新たな協調・提携関係の形成
3 生産系列取引の変化
4 産業政策
5 繊維産業の構造変化
II章 工業企業の特徴と矛盾
1 揺れる生産方法――自動化の罠と規模の経済――
2 企業内世界分業の展開と空洞化
3 労働力編成と労使関係
4 企業政策
5 繊維企業のリストラクチャリング
III章 変化する産業構造
1 はじめに
2 米国の産業構造転換
3 日本の産業構造転換
4 日本の産業構造の若干の特徴
5 産業構造政策と勤労権
第2編 大競争時代の日誌産業の構造調整
――テキスタイル・アパレル産業を素材にして――
はじめに:構造調整論試論――文献サーベイを中心に――
Iv章 現代日本繊維産業概論
l はじめに
2 繊維産業とは
3 日本繊維産業と産業システム
4 繊維主要国の比較
5 先行研究と第2編の構成
V章 米国のQRSまでの過程とイタリアの産地生産システム
l 第二次大戦後の米国繊維産業
2 「モノ作りの国」イタリアの産地生産システム
3 日本におけるQRS構築の模索
VI章 アパレル企業における情報化とQRS
VII章 倉敷市児島地区アパレル産地の分析
VIII章 紡績・合繊企業の構造調整
IX章 量産織物産地での織布専業企業の廃業と模索
X章 繊維産業政策とコミュニティ経営政策
l はじめに
2 構造調整の方向性は適切か
3 繊維産業構造改善事業
4 繊維ビジョン(1993年12月)
5 何から始めるべきか
6 コミュニティ経営政策の必要性
立読みのページp70-75(09/12/18)
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