元田 厚生(東北大学)著

経済学のパラダイム・チェンジ

A5判 上製 P274 本体2800円  

 本書は,マルクス学説を新しい時代に相応しい政治経済学として再製するためには,その対極的社会システム観を超克し,労働価値説・価値法則論・商品交換論・剰余価値論として知られる理論的枠覿を転換すべきことを明らかにするものである。ここでほ,資本制を本源的共同体制の疎外態,そして共産主義を共同体制の高次復活として位置づける,その対極的な社会観(後出)に限定してその理由の一端を明らかにする。

目次

序説 パラダイム転換の視点
(1)マルクス学説の転変
(2)市場と計画の両面的乗り超え
(3)破綻分析から再生分析へ
(4)全労働収益権論の継承

第1章 経済社会を計量的に観ることの転換
第1節 素材的富の資本制的規定性
(1)計量的経済思考の限界
(2)富源泉の本来と特種
(3)マルクスの限界
第2節 労働の擬制的単位への転化
(1)量的価値観の形成
(2)再生産コスト観念の変容
(3)自然再生産の欠落
(4)旧価値移転の選択性の軽視
(5)労働価値説と剰余価値論
第3節 自然・使用価値・生活の計量化
(1)質的存在としての自然
(2)量的自然観の形成
(3)使用価値の質の捨象
(4)生活の多様性の抹殺

第2章 客観法則的に経済社会を観ることの転換
第1節 物象論的認識方法の限界
(1)マルクスの法則観
(2)資本制における法則への盲目的拝跪
(3)社会主義における法則の意識的運用
第2節 価値法則論の実相
(1)商品価値の技術的規定
(2)価値法則の「論証」
(3)作業場内と社会内との同一視
(4)マルクスに独自の整合論
(5)物象論的歴史認識の反省
第3節 生産物から生活への重心移動
(1)富の関係論的把握
(2)時間の分配
(3)生産物の分配
(4)労働の配分
第4節 関係論的認識方法の有効性
(1)生活体系の性格変容
(2)資本関係の性格変容
(3)内質的変革という視点
(4)マルクスの到達点
(5)価値法則と生活体系

第3章 貨幣を特種資本制的とみる観方の転換
第1節 交通関係の性格変容
(1)間題のありか
(2)マルクスと交通
(3)掠奪・贈与・交易
(4)貨幣の性格変容論
第2節 マルクス貨幣生成論の蹉跌
(1)貨幣論を見る眼
(2)素材的整合関係と強制関係
(3)交換手段一般の析出
(4)商品交換命題の限界
第3節 対極的社会システム観の限界
(1)商品交換再審の蹉跌
(2)哲学的ゲマインヴェーゼン
(3)交換の有無からする2分法
(4)対極的社会観の問題性
(5)経済学批判体系プランの制約

第4章 剰余価値から資本制を観ることの転換
第1節 剰余価値搾取論の一面性
(1)使用価値と剰余価値の関係
(2)必要労働概念の限界
(3)剰余労働概念の限界
(4)社会的必要概念の二重措定
第2節 関係性視点による剰余価値把握
(1)メイヤスーの展開
(2)必要労働の性格変容論
(3)剰余労働の性格変容論
(4)剰余労働消滅論
(5)性格変容と形態転化
第3節 資本制の揚棄と個人の関係
(1)共同体主義の超克
(2)労働所有論という誤認
(3)個別個人成立の画期性
(4)個別的自立性の否定という視点
第4節 資本制的所有関係の改変
(1)労働と所有の連一という視点
(2)所有関係における労働と自然
(3)個別と共同の相互浸透

あとがき
人名索引
事項索引1(五十音)
事項索引2(分類)
引用および言及文献

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