本書は、日本と中国の研究者による共同研究書である。その特徴は、環境思想を抽象的に議論するのではなく、日本や中国のおかれている具体的な現実から出発して環境問題を取り上げ、それを思想のレベルから議論していることにある。
日本と中国では、社会経済システムも、環境問題をめぐる状況も相当に異なっているが、本書は、環境保全ということを基本的な立脚点にして、相互の立場を尊重し合いながら、協力し合ってまとめられたものである。巨大な人口を抱える隣国中国の環境問題は、日本にとってはけっして他人事ではすまない問題であるだけに、両国の研究者が環境問題を共同で考え、論じ合うことは重要であるだろう。本書は、そのための一つの試みである。
日本版序文
中国版序文
第一章 環境にたいする哲学的反省
1 エコロジーと現代唯物論 牧野広義(阪南大学教授)
2 環境問題と儒教・道教の伝統思想 劉 大椿(中国人民大学教授)
3 環境倫理学は何をもって可能となるか 任 平(蘇州大学教授)
4 環境の倫理学的考察の意味 高田 純(札幌大学)
第二章 環境問題と自然観
1 環境問題と新たな自然観の形成 肖 顕静(中国人民大学大学院)
2 自然哲学は環境問題とどうかかわるか 島崎 隆(一橋大学教授)
3 生物多様性保全の倫理 稲生 勝(岐阜大学助教授)
第三章 環境問題と人間の生活・労働
1 人間生活と環境の視点 岩佐 茂(一橋大学教授)
2 労働と環境的経済価値論 呉 向紅(中国科学院副研究員)
3 マルクスの労働概念とエコロジー 韓 立新(一橋大学大学院)
第四章 科学技術、環境と発展
1 持続可能な発展と環境問題 何 曼青(中国人民大学大学院)
2 地球環境問題と技術の発展 和田 武(立命館大学教授)
3 環境問題と技術の選択 李 文擢(中国鉄道研究所研究員)
4 科学技術とエコ価値観 雷 毅(中国社会科学院大学院)
第五章 理念と政策
1 日本の環境行政の推移と問題点 歌川 学(資源環境技術総合研究所研究員)
2 『中国アジェンデ21』と環境問題 馬 書春(中央党学校講師)
3 中国の現代化過程における国民の環境意識 劉 海波(中国社会科学院副研究員)
第六章 回顧と展望
1 日本における環境思想研究の現状と動向 岩佐茂
2 中国の環境問題の現状と動向 劉 大椿
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