記憶の風景 鈴木賢二 小版画集 文・鈴木 解子
物売りの声がきこえる

上製 156P 本体1800円 

 今回の作品群は,鈴木賢二の版画作品のごく一部にすぎない。版画作品のなかでも,人々の群像ともいうべき軸となる作品,子供の風景の作品,詩情あふれるカットなど,ご紹介したい作品は多い。立体作品,工芸作品,肉筆画については,調査中である。「職人,物売り」をとりあげたのには意味がある。今日の社会では,ほとんど出会うことのない職業,版画のなかにある懐かしさは何だろう。単なる懐古趣味だとは思わない。今日の,便利な産業文化に取り囲まれた生活とは異なった,家族の延長上のような地域社会,声をかければ返事のかえってくる等身大の社会のあたたかさ,やさしさは,まぼろしかもしれない。しかし,賢二が,子供たちののびやかに遊ぶ姿を版画にしたことを考えると,意図したかどうかはわからか−が,現代の社会構造のなかで失われていくものを,大切なものとして描きとどめておきたかったのではないか,と思えてくる。(「あとがき」より)

目次

1景 街角の風景 物売りの声がきこえる
なっとーうり ぎうにうはいたつ とうふや ふき豆 たまごや ないや はなうり オチニサン ぢょうさいやふーりんや しゃぼんだま かきごーり ほたるや むしやきいも うどんうり つじうらうり ちょーせんあめ・ちょうせんくじ どっけしうり なないろとうがらし まごたろうむし 四つだけ はたさおや にっこうとうがらし ふなや こんにゃくうり こいくみ くづいー チーラッカ えんとつそうじ 

2景 小さな私のいる風景
ろくろ きんぎょうり バナナたたきうり こーりかし ごーがいうり かしうりや べっこあめ 手やきせんべい きんたろうあめ きんつば わたあめ こうもりや ぶりきや かんざしあめ ところてん 赤帽 くつや ようさくさん はごいた 

3景 家族
ぜにがめや こびき めたてや たいやき あまさけ ふかしまんじゅう キンカとう(日出子) げたのはすげかえ ほうきや 文字焼 たどんや 

4景 街角の風景 小商い
おーひらだんご 糸きりだんご こーりまんじ やきまんじゅ ゆでまんじ やきだいふく やきだいふく いもぐし やきとり ろくろ もっこかつぎ おけや のれんし

5景 父
いだまめ くまのえ やまいもほり(日出子) カルメやき(日出子) とーみぎ さいもんかたり かりんと らうのすげかえ くるまや ロシア人のケットや 平井の和市 うつのみや たらいあめうり つばき油 ネズミとりのくすり ふでや えま師 やきいもや とこや 

6景 季節折々 縁日と芸人たち
みかわまんさい まゆだま 正月まいり あさがほ市 ほーづき市 やつがしらとりの市 とりの市 えびすこう わらでっぽう しんこざいく ふきあめや いんかし ごぜ さるまはし かくべいじし とうごうのこままはし かどづけげっきん むすめぎだゆう やまぶし

解説
鈴木賢二の芸術  (竹山 博彦)
五角形の男  (飯田 晶夫)
あとがき  (佐山 正樹)
鈴木賢二略歴

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