新版 技術論論争史

 中村静治(横浜国立大学)著  594頁 四六判上製 本体4500円
ISBN4-915659-76-3

 戦前戦後を通じて四〇年間にわたってつづいた技術とは何かをめぐる論争を、自説を積極的に展開しつつ錯綜した争点を鮮明に解きほぐし、その社会経済史的意義を明らかにした『技術論論争史』に「武谷三男は何を言ってきたか――意識的適用説の墓標――」の1章を加えた新装版

 
 新版の序
第1章 技術論の誕生とその社会的背景
 一 唯研技術論研究の契機と背景
  1 発  端 
  2 社会経済的背景 
 二 主観と客観の戸坂哲学
 三 「テヒノロギー」の相川登場
 四 労働力モメントを強調する岡
 五 戸坂、相川、岡の争点
第2章 研究の深化と唯研技術論の歴史的意義
 一 「主体的構成部分」にたいする永田の批判
 二 「市民的学者」の労働手段体系説批判と相川「技術論争の要点」
  1 馬場、藤林の「マルキシスト」批判 
  2 相川の「自己批判」と岡、戸坂批判
 三 戸坂の切返し
 四 岡の二つの「提言」と「技術論」の「定立」
 五 永田『唯物史観講話』と相川『技術論』
  1 吉田斂の論争「総括」 
  2 永田『唯物史観講話』の到達点 
  3 相川『技術論』の歴史的意義 
 六 研究の具体化と唯研技術論の評価
  1 研究の具体化 
  2 唯研技術論研究の歴史的役割 
第3章 「科学主義工業」と相川の転向
 一 「科学主義工業」と戸坂の対決
 二 三枝技術論と相川の転向
 三 発明本質論の三木哲学
 四 相川『現代技術論』の評点
 五 アカデミーにおける技術論研究
第4章 「科学技術新体制」と武谷適用説の生成
 一 「科学技術新体制」と宮本技術論
 二 宮本技術論の土壌
 三 武谷適用説の生誕
 四 相川の「適用」概念批判
第5章 戦後論争の開幕
 一 戦後論争を理解するために
 二 武谷適用説の要点と岡「技術論ノート」
  1 武谷適用説の要点 
  2 岡「技術論ノート」 
 三 山田坂仁の登場
  1 山田論文の大要 
  2 三段階論とマニュファクチュアの技術 
 四 論争の広がりと武谷讃歌
 五 星野芳郎の登壇
 六 「大」物理学者と「小」哲学者
 七 大谷、星野の追及と吉岡金市の追唱
第6草 適用・手段両説の新展開
 一 一つの折衷説と二つの論争展望
  l 大木秀男の折衷説 
  2 上林貞治郎の「展望」 
  3 芳賀穣の「成果と課題」 
 二 武谷技術論と主体性唯物論の結合
  1 星野『技術論ノート』と「労働力」論争 
  2 田中吉六における「技術論と認識論」 
  3 黒田寛一における武谷適用説 
 三 労働手段体系説の体系的展開
   − 岡『技術論』の要点 −
  1 「手段と方法」、「技術と技能」 
  2 「体系」概念の展開と関恒義の評論 
  3 労働手段と技術水準 
  4 農業技術とマニュファクチュアの技術 
第7章 「技術論と史的唯物論」をめぐつて
 一 高島善哉の論争批判
 二 主体的技術論の危機
 三 星野「技術論と史的唯物論」の要点
 四 笹川による「観念論的性格の確証」
 五 笹川論文にたいする岡の評点
第8章「第二次産業革命論」論争
     − 星野・相川論争 −
 一 現代技術をどうとらえるか
 二 武谷『原子力』と星野「二〇世紀の技術」
 三 相川の星野批判
 四 星野の反批判と野呂栄太郎
 五 技術史ゼミの「第二次産業革命研究」と「現代技術論の課題」
第9章 技術における内的発展法則について
    − 技術史の時代区分論争 −
 一 石谷「動力史の時代区分と動力時代変遷の法則」
 二 田辺・大谷論争
 三 大谷・田辺論争
 四 適用説の「技術の発展のしくみ」
第10章 「技術革新」と軍事技術論争
 一 「新しい産業革命ははじまっているか」
   − 適用説のオートメーション評価 −
 二 適用説と「新」マルクス主義の結合
 三 今井「経済と技術の発展法則」と守屋の批判
 四 戦争と技術の関係をめぐつて
第11章 日本技術の特質と自立・従属論争
 一 『日本資本主義講座』における技術導入の評価と小野義彦の批判
 二 共産党の「科学技術政策」と奥村・武谷論争
 三 小野、大橋の技術導入、直接投資評価
 四 内田穣吉の経済軍事化論と「技術捏携」評価
第12章 装置論争
 はじめに
 一 マタレ装置論の大要
 二 馬場・相川論争
 三 三戸のマタレ批判と岡の三戸批判
 四 スターリン論文と原装置論
 五 三戸・原論争
 六 田辺−山崎装置論と三戸説の再生としての下谷説
 七 マルクスの視点
 八 装置の発展法則と適用説の「停滞」
第13章 労働過程はなくなるか
        − 原・内海論争 −
 はじめに
 一 労働対象と労働手段の区別基準について
 二 自動的生産過程をめぐって
  1 論争の発端と内海論文の要点 
  2 原の反批判と自動的過程 
 三 原・内海論争の遺産
  1 オートメーションと剰余価値法則 
  2 論争にたいする芝田の裁定
 四 腐技術論の難点
  1 史的唯物論の根本命題逆転説 
  2 折衷的な技術規定 
第14章 新たな折真説の台頭
      ー 芝田連年『科学‖技術革命の理論』をめぐつて ー
 一 技術論論争にたいする芝田のアプローチ
 二 東京唯物論研究会における討論
 三 科学=直接的生産力にかんするソ連研究者の典拠について
 四 芝田における大工業と生産様式
 五 技術革命とは何か
  1 芝田の技術革命概念と「マルクス主義の『技術革命』論の論点」
  2 二つの「技術革命」の混淆 
 六 『科学=技術革命の理論』上梓と批判の集中
  1 木下、大谷の芝田批判 
  2 牧・芝田論争 
  3 荒川泓の芝田批判 
  4 近藤・芝田論争 
第15章 星野技術論の崩壊のなかで
 一 「マイ・カー」から「エネルギー革命」へ
  1 新しい鉄鋼技術の大番狂わせ 
  2 「エネルギー革命」讃歌 
 二 近代化路線べったりの『日本の技術革新』
 三 「技術革新の停滞」と自動車先端技術説
  1 「技術革新の停滞」と「両参一改三結合」
  2 自動車評価の逆転 
 四 つながらない「公害の論理」
 五 星野・梅林論争
 六 星野技術論の崩壊のなかで
第16章 山田技術論の旋回・堕落
 一 山田の自己批判
 二 労働手段体系説の「克服」
  1 労働対象がこぼれおちる 
  2 技術的方法は技術の主要構成部分であるか 
 三 技術論における「偏向」的批判
  1 星野説をめぐつて 
  2 今井−長洲説をめぐつて 
  3 岡説をめぐつて 
 四 スターリンからフルシチョフヘ、フルシチョフから毛一辺倒へ
  1 スターリン批判への便乗と「大躍進」技術論批判 
  2 「大躍進」礼讃とソ連批判 
  3 「経験的技術と科学的技術」 
第17章 意識的適用説の墓標
 はじめに
 一 マルクス主義は個人と社会をつなぐ理論を欠いていたか
  1 生産諸カと生産諸関係との矛盾 
  2 生産関係の所有関係への改ざん 
 二 特権と人権との対立は弁証法の矛盾か
  1 原始社会に人権の自覚はあったか 
  2 社会主義革命はどこで変質されたか 
  3 意識的適用説の終焉 
  4 実存主義との狂想曲 
 三 階級構造はわかりにくくなったか
  1 資本所有と機能の分離 
  2 株式会社の形成と発展
  3 個人的所有の再建
 四 武谷三男は何を言ってきたか
  1 兵器の増産には適用説をどうぞ
  2 原子爆弾は世界の野蛮を追放した 
  3 スターリンは誤っていない

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