日本地主制と近代村落 A5判 上製 P250 |
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近年の日本地主制研究は,かつてと異なり,村落支配・地域支配との関連に目を向けるものが増えてきている。地主制研究といえば,かつては小作層との関連でその階級的性格が研究主題ときれていた。その後,日本における地主制の存在を,日本資本主義の再生産構造のなかに位置づけ,さらに国家の支配秩序と関連きせて,地主制,資本制,天皇制の三者の構造的連関を解明することに重点が移っていた。中村政則氏等の仕事を頂点として,日本地主制の持った本質的な位置づけは,ほぼ共通の認識に達してきたかと思われる。 しかし,そうした本質的・理論的位置づけをさらに実証的に深めることが意図されるなかで,地主制研究に二つの特徴が現われてきた。一つは,研究の対象時期が,地主制確立期から,地主制と資本制乃至国家支配との矛盾が露わになり,地主制が変化・解休の過程に入る時期に移ってきたことである。もう−つは,地主の支配構造を,単に小作層との階級関係に限定することなく,村落・地域の支配秩序,農民層の統合的支配秩序の局面から考察するようになったことである。 この両者は,私の地主制研究の比較的当初より関心のなかにあり,そうした考察もまた重ねてきたところであるが,近年の諸研究は,それをきらに実証的に精緻なものとし,また地主の社会的支配秩序の理論的規定も提起されるに至つて,一段とその厚味を増してきたと考えられる。このようにして,日本地主制の全生涯が明らかになると同時に,その全局面が明らかにされつつあるのである。そのことによって,近代日本の地主制・資本制・天皇制の社会的関連の特質が,より深く認識きれる状況になってきたと思える。 こうした課題意識の展開は,科学諸分野の研究者の間に,共通の課題を作り出し,相互に補い合い,きらに具体的共同研究をも可能にしてきている。 現実に可能にしてきている。 本書は,こうした研究動向を踏まえて,経済史学・社会学の研究者を中心に,新しい視角から,地主制と村落の関わりをテーマに編集したものである。
第1部 理論・方法編 |