ここで言う「文学教育」とは、現行の国語科の中で、文学をどう教育するか、文学教材とはどうあるべきかなどを問題にする分野と考えていただきたい。別に、国語科を言語科と文学科とに分けて、後者で行なう芸術的教育のことを指す場合もあるが、これではない。私の言う「文学教育」の内実もこの章の展開に従って明らかにしていきたいと思うが、いま、一つのことだけ記すとすると、「文学教育」とは、文学作品の「読解」指導とか「読み方」指導とは異なる立場であると考えている。文学に接した時の生徒の意識や生活を重視する程度や仕方で、「読解」指導・「読み方」指導とは違っていると思うからである。
目次
第一章 私にとっての文学教育
はじめに
一 メロスはキレた
二 教課審の「審議のまとめ」について
三 「十人十色を生かす文学教育」
四 いま必要な文学教育
第二章 授業実践
I 作品との出会いを大切にする
――チェーホフ「カメレオン」の授業――
一 報告の意図
二 作品について
三 教科書の設問について
四 「カメレオン」の授業
五 生徒の到達点
II 人はなんのために生きるのか
――読みから作文へ――
はじめに
一 教材について
二 作文「人はなんのために生きるのか」
三 自殺について討論する
おわりに
。 高校生と詩の授業
――金子光晴「くらげの唄」――
はじめに
一 “いまの私もくらげだ”
二 「くらげの唄」についての討論
三 生徒の「くらげの唄」論
四 生徒による詩作へ
IV 女工の訴えをめぐって
――葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」――
一 本教材をどうみるか
二 本教材をどう教えるか
三 補説
V 評論教材の授業
――高取正男「個人のシンボル」――
一 評論教材の扱い
二 高取正男「個人のシンボル」
三 「ワタクシ」をめぐって
最後に
VI 一人ひとりの読みを求めて
――太宰治「清貧譚」の授業から――
はじめに
一 「清貧譚」と生徒との出会い
二 「清貧譚」の授業の実際
三 生徒はどう読んだか
四 教材としての「清貧譚」
第三章 教材研究
I 詩――石垣りん「峠」
一 教材研究
二 指導研究
小説芥川龍之介「鼻」
一 他人の目からの解放
二 生徒の反応から
三 見られる自己
四 「まなざし」の呪縛からの回復
。 伝記――イートン『ガンジー伝』(高杉一郎訳)
一 ガンジーの少年時代
二 反英独立戦争
三 インド全民衆の統一を
第四章 文学教育の理論をめぐって
氈@現実と対決する文学教育
――益田勝実その初期の仕事について――
はじめに
一 「考え・感じとり・創り出す」
二 益田氏のリアリズム
三 現実主義的思考
四 実践化の問題
五 米田氏からの批判
六 文学教育と作文教育と
七 「ほんとうの読み方」を目指して
八 ことばによる思考力の育成
「問題意識喚起の文学教育」の検討
――荒木繁の実践・理論について――
はじめに
一 荒木氏の報告とその背景
二 西尾氏からの評価
三 西尾説への荒木氏の疑問
四 読者の主体と問題意識
五 文学の教育的機能
六 最後にあたって
あとがき
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