労働価値論を基礎とした経済学の体系は,現代「社会主義」世界の崩壊の影響を受けて,次第に解体の方向へと向かっているかのように見える。確かに,マルクスが述べていることがすべての面で妥当すると考えるならば,われわれは,誤りに陥らざるをえないであろう。しかし,地球的規模で見れば資本主義を原理とする経済体制がますます広まっていくとき,資本主義の一般的経済法則の解明を課題としたマルクス『資本論』の意義が小さくなっていくことほ考えられないのである。東アジアを中心に,現在展開されている光景が,マルクスが描いて見せた資本主義の運動法則の展開を示しつつあるのを見れば,この点は明らかではないだろうか。労働価値論を基礎に,価値論および経済学の全体を再構築するという仕事の重要性を痛感する所以である。
目次
まえがき
第1部 商品・貨幣から資本へ
第1章 商品
1 分析の対象としての商品
2 商品の2要因――使用価値と価値
3 価値の概念その社会的実体と表現形態
4 価値の大きさとその社会的評価
第2章 商品生産社会の特徴
1 商品の物神的性格
2 商品生産関係の本質
3 商品生産社会の国家・法と社会意識
第3章 貨幣
1 価値の貨幣表現価値形態の展開
2 貨幣の本質とその生成の必然性
3 貨幣の基本的機能
第4章 貨幣の資本への転化
1 資本の流通形態
2 資本の一般的定式の矛盾とその解決
3 労働力商品の売買
第2部 資本主義的生産と諸資本の競争
第5章 剰余価値の生産と資本の蓄積
1 資本主義的生産過程の特徴
2 絶対的剰余価値の生産
3 相対的剰余価値の生産
4 資本の再生産と蓄積
第6章 利潤と利潤率
1 剰余価値の利潤への転化
2 利潤率と剰余価値率
3 置塩氏による「マルクスの基本定理」の説明について
第7章 平均利潤率と生産価格
1 課題と分析の対象
2 生産価格の概念規定
3 諸資本の競争と価値の生産価格への転化
第8章 価値の生産価格への転化――部門内競争・部門間競争とその統一――
1 資本の部門内競争による市場価値の形成
2 商品供給量の「異常な組み合わせ」の場合
3 「価値の生産価格への転化」の理論的前提
4 部門間競争による「価値の生産価格への転化」
5 競争の全体と市場生産価格の形成
第9章 「価値の生産価格への転化」に関する諸見解
1 ボルトケヴィッチの議論とその系譜
2 マルクスの生産価格概念規定への回帰
3 「競争による価値の生産価格への転化」論に向けて
4 1つの批判への反論
第3部 置塩信雄氏の価値論・生産価格論
補論1 労働価値論とマルクスヘの回帰――置塩信雄氏の価値論によせて――
はじめに
1 商品の概念規定について
2 価値規定と商品形態の必然性
3 商品の概念規定と唯物論的方法
むすび
補論2 置塩信雄氏の生産価格論を吟味する
はじめに
1 マルクスの生産価格論に関する置塩氏の理解
2 置塩氏の転化論
3 計算結果に関する置塩氏の説明
4 奢侈品部門と均等利潤率
むすび
あとがき
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