このたび読者のみなさんにお届けするこの本は、大部分はこの数年間、私が各種の新聞や雑誌に寄稿した文章をひとつにまとめたものです。まとめるにあたって、若干の加筆をしたものもありますが、なるべく原形のままにということで、それも最少限にしてあります。また前著『理性の復権』 (新日本新書)で利用した文章もありますが、それもそのままにしてあります。その方が全体の感じが保てると思ったからです。
第一章は一九八二年の九月から十一月にかけて『学生新聞』に連載したシリーズ 「生活のなかの哲学」を収録したものです。主に、大学、専修学校などの高等教育機関の学生を念頭に書いています。第二章は『われら高校生』に一九八六年十月から十二月にかけて「科学的社会主義入門」の一環として「哲学を学ぼう」というタイトルで連載したものです。もちろん高校生程度を対象としています。
第三章は現代イデオロギー批判、文明批評めいたものです。また第四章は学問・哲学を学ぶにはこんな心得が必要だと思ったことをまとめたものです。いずれも、高校生、大学生ばかりでなく、一般の方にも読んでいただきたいと思っています。
第五章は現在の流行思想批判です。・・・・・・・・・(「あとがき」より)
目次
第一章 生活のなかの哲学
一 君はどこで哲学に出会うか――生きた現実の人間を課題として――
二 哲学とはいったいなにか――理性で構築された体系的な世界観――
三 哲学は世界をどうとらえるか――世界観の特徴は社会観に鋭く現れる――
四 われわれに未来はあるか――歴史の発展方向と結んでこそ――
五 現実的な生き方とはなにか――理性と可能性信じ,未来拓く――
六 本当のことは結局わからないか1――客観的世界との関わり否定する実証主義――
七 本当のことは結局わからないか2――理性を無力視するパラダイム論――
八 問題意識がないとどこに行きつくか――「問題」みつけ,解決する行動へ――
九 非合理主義の行くえはどこか――理性だけでなく,感情も破壊――
十 生活のゆたかさとは――未来へのたたかいの中でこそ――
十一 真の連帯をもとめて――未来めざし現在に生きる人間に――
第二章 哲学を学ぼう
一 私たちはなぜ学ぶのか
二 哲学とはいったいなんだろう
三 君は「占い」を信ずるか
四 世界を科学的に見よう
五 世界はどのように動くか
六 世界はなにによって動くか
七 知識に限界はあるか
八 社会の歴史には法則がある
九 「くに」と「国家」
十 私たちは人間である
第三章 現代生活の光と影
一 流行思想の最近の特徴――『現代思想のキイ・ワード』を中心に――
二 古い思想の新しい装い――浅田彰の世界――
三 批判の矛先はどこに向けられているのか――『見栄講座』をめぐって――
四 「ピーター・パン・シンドローム」とはなにか
五 「自分の時代」と真の個性――“自分学”の流行のなかで――
六 理性の破壊は何をもたらすか――中村雄二郎氏の場合――
七 才女はマルクス主義をどう変えるか――上野千鶴子の世界――
八 『若者たちの神々』が描く若者論とは
九 対話・問題・真理――対話のすすめ――
十 はびこる「気くばり」,とだえる対話――相対主義によせて――
十一 現在の思想状況――非合理主義宣伝に特徴――
第四章 哲学へのプレリュード
一 『フォイエルバッハ論』と現代
二 社会主義の理念を示す――エンゲルス『空想から科学へ』――
三 古典への挑戦――へーゲル哲学の学習――
四 弁証法の今日的課題
五 「知は力」ということ
第五章 現代思想を撃つ
1 〈パトスの知〉の行きつく先――中村雄二郎氏による“理性破壊”の論理――
一 中村雄二郎氏の世界
二 中村雄二郎氏は理性をどうみるか
三 中村雄二郎氏の理性観の一面性
四 共通感覚論――感性論の核心
五 「五感の組み換え」とはなにか
六 〈受動(パトス)の知〉など
七 理性と感性・感情との真の連帯
2 「パラダィム論」の批判的検討
あとがき
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