本書は,タイトルにもあるように,産業集積が1980年代以降量的に縮小傾向に入り,1990年代にバブル経済が崩壊して以降の製造業自体の縮小傾向によってさらに縮小傾向に拍車がかかっていることをどのように考えるべきなのか,という共通の問題意識にもとづいている。本書の第1章でも紹介されているように,産業集積研究は,産業集積が地域の中小企業や地域経済にとって有効であることを前提に議論を進めてきたが,実態は必ずしもその前提が成り立っていないことを示している。産業集積や集積内の中小企業,さらに日本の製造業の今後を考えるためには,量的に「縮小」している産業集積をどのように評価し,どのように対応していくのか,について真摯に検討していくことが必要である。量という側面だけを見ると産業集積は明らかに「縮小」しているが,産業集積が持っている機能や可能性も「縮小」してしまっているのか,新たな展開の可能性はないのか,われわれはそんな問題意識を共有しながら,本書の執筆に取り組んできた。(本書「はしがき」より)
目 次
はしがき
第1章 産業集積の『縮小』と産業集積研究
(植田浩史)
第2章 中小企業と技術革新――冷間鍛造技術・フォー
マーの東大阪地域への普及――(田中幹大:小樽商科大学)
第3章 大都市小零細工業における技能形成と継承
(松永桂子:島根県立大学)
第4章 産業集積の『縮小』と人的ネットワーク
(義永忠一:桃山学院大学)
第5章 岡山県児島アパレル産地の発展メカニズム
――産地の集合表象を中心に――(立見淳哉:
大阪市立大学)
第6章 中小企業連携の効果とベンチャー化――アド
ック神戸をケースとして――(関智宏:阪南大学)
第7章 産地縮小と地域内企業の新たな胎動――旭川
家具産地における産学連携の存在と「北欧調
家具」の展開――(粂野博行:大阪商業大学)
第8章 地域別工業会の機能――東京・大阪を比較し
て(桑原武志:大阪経済大学)
第9章 大都市圏の動態と地域政策――東大阪集積地
域のインナーシティ問題を中心に――(本多哲夫:大阪市立大学)
終 章(植田浩史)
参考:
植田浩史編『産業集積と中小企業』A5判上製 240ページ 2600円(平成12年度商工中金の中小企業研究奨励賞を受賞)
植田浩史・本多哲夫編『公設試験研究機関と中小企業』A5判上製 324ページ 3200円
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