仲本章夫(都立短大名誉教授)著
続・生活のなかの哲学

46判 並製 246P 本体1400円 

 ここに読者のみなさんにお届けする本は、『生活のなかの哲学』の続篇です。私たちの営む「現代生活」は、私自身ときにほ不思議に思うほど、おかしなものです。一人ひとりに聞くと、みな平和を願っているのに、社会全体としてはあまり平和とも言えない状況です。円高ドル安で、外国への旅行者が急増しているのに、生活必需品はいっこうに下がりません。また海外での美術品市場でほ日本人が札束をもって群れているのに、国内では生活保護費受給者への迫害が強まっています。物理学の先端的な研究者が、ヨガをはじめて突然「東洋の神秘思想」に「目覚め」たりします。青年が大真面目で「背後霊」や「血液型占い」の話をします。私事にもなりますが、私の勤務先では、学生経費や教員の研究費ほ据え置き(つまり、実質減額)なのに、コンピュータやLLにほ大量の予算がつきます。ちなみに、設置母体は空前の大黒字で、建設・土木予算はふんだんにつきます。道路では、視覚障害者のための点字ブロックのうえは庶民の自転車の置場になっています。これも私事ですが、歩道は自転車道となり、高音のベルがよく聞こえない聴覚障害者の私ほ、なるべく車道を歩くことにしています。
 一つひとつについてよく考えてみれば、誰でも正常な判断をすることができます。ところが、寄せ集めてみればどうも変なことになってきます。私たちは客観的な行動をして、それぞれが私たちの意識から独立した意味付けをもっています。ところが、私たち人間は行動するときは必ず「意識」をとおします。おそらく、この辺のところでさまざまな屈折が起こるのではないかと思われます。だから、この「生活」の分析がもしかしたら、問題解決への重要な鍵なのかもしれません。・・・・・・・・・(「あとがき」より)

目次
第一章 現代生活の光と影
 一 神秘主義について考えよう
 二 「近代批判」としての「感性の時代」論
 三 世紀末ブームとニヒリズム
  ――『アキラ』と『北斗の拳』の世界――
 四 脱イデオロギーとはなにか
  ――「偏っていない」という名のイデオロギー――
 五 問題をゆたかにとらえるために――知を力にするために――
 六 連帯してこそ若さはみがかれる――二〇歳の貴女に――
 七 新しい旅立ちのために――新入学の青年たちへ――
 八 夢・希望を大事にした進路決定を
  ――進路選択をひかえた高校生へ――

第二章 「現代思想」を撃つ
I 「現代思想」のパノラマ的概観
  ――ニューアカデミズムから日本文化論まで――
 一 現代の危機とそれを覆いかくす霧
 二 「現代思想」の哲学的特徴
 三 「現代思想」のパノラマ的概観
II  「現代観念論の混迷」をつらぬくもの――『新・岩波講座哲学』を論ず――
 一 第5巻『自然とコスモス』をめぐって――坂本賢三氏の世界――
 二 第7巻『トポス空間時間』をめぐって――中村雄二郎氏の世界――
III 「現代思想」の行きつくさき――ニューサイエンス批判――
 一 ニューサイエンスの哲学的特徴
 二 不可知諭,神秘主義,相対主義等々
 三 ニューサイエンスの主張
IV パラダイムか科学的理念か――相対主義批判――
 一 トーマス・クーン『科学革命の構造』におけるパラダイム論
 二 パラダイム論の哲学的,認識論的特徴
 三 哲学におけるパラダイム論の特徴
 四 パラダイム論と古い主観主義・不可知論との相違
 五 「科学的理念」の提唱

第三章 哲学への招待――古典による哲学入門
I レーニン『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分』を学ぶ
II エンゲルス『フォイエルバッハ論』を学ぶ
第一回 哲学とはなにか
第二回 哲学の根本問題とは
第三回 世界を認識することができるか
第四同 弁証法と形而上学
第五回 『フォイエルバッハ論』第一章を学ぶ
第六回 『フォイエルバッハ論』第二章を学ぶ
第七回 『フォイエルバッハ論』第三章を学ぶ
第八回 『フォイエルバッハ論』第四章を学ぶ
III レーニン『唯物論と経験批判論』を学ぶ
第一回 『唯物論と経験批判論』が書かれた目的
第二回 「序論にかえて」を学ぶ
第三回 『唯物論と経験批判論』第一・二章を学ぶ
第四回 『唯物論と経験批判論』第三・四章を学ぶ
第五回 『唯物論と経験批判論』第四章第六節を学ぶ

あとがき

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