岩佐茂・島崎隆(一橋大学教授)編著

精神の哲学者 ヘーゲル 

46判上製320頁 2000円 発売中

 

 ヘーゲルに関する文献学的研究が進み、ヘーゲル自身の草稿など、オリジナル・テキストの分量が飛躍的に増大した現在、膨大な内容と多面性をもつヘーゲル哲学を、一言でどう特徴づけられるだろうか。否、そうした試みこそ、そもそも冒険的としてそしられるかもしれない。だが、あえてこの試みに挑戦するとすれば、私の意見では、それを《精神の哲学(Philosophie des Geistes )》と名づけるのが妥当のように思われる。少なくとも、《精神(Geist )》をヘーゲルがどのように把握しようとしたのかを追究することは、ヘーゲル哲学の本質をつかむのにおおいに有効であるだろう。そしてこのとき、『エンチュクロペディー』の体系(論理学−自然哲学−精神哲学)でいうと、このなかの第三部門である「精神哲学」のみに注目されるされるわけではなく、ヘーゲル哲学全体の基本性格が問題とされる。・・・・・・・・・いずれにせよ、すでに示されたように、《精神》をキーワードとしてヘーゲルを読み解くことはその哲学的可能性をさらに切り開くこととなるのではないだろうか。(本書「序章」より)

<目次>

まえがき

序章 ヘーゲルにおける、≪精神の哲学≫の構想           
    島崎  隆

 1〔基本性格〕ヘーゲルにおける≪精神≫の概念とその意義
   
島崎  隆

 2〔若きヘーゲル〕「人倫における悲劇」から「市民社会」の誕生   
   
佐山 圭司

 3〔精神現象学〕精神の条件――ヘーゲル哲学と功利性原理――
   
小屋敷琢巳

 4〔論理学〕魂(Seele)から精神(Geist)へ
   ――ヘーゲル論理学における形而上学的心理学批判――

   大河内泰樹

 5〔法哲学〕個々人は普遍的意志を担いうるか?
   ――ヘーゲル『法哲学』において人民を精神と捉える意味――                 

   神山 伸弘

 6〔自然哲学〕「自然の無力」から「精神」へ             
   稲生  勝

 7〔美学〕ヘーゲル哲学における芸術家と享受者  
   ――『美学講義』以外のテクストから――   兵藤佐貴玖

 8〔歴史哲学〕「自由」を原理とする歴史哲学の射程  三崎 和志

 9〔哲学史関連〕他なるものをめぐって
   ――フォイエルバッハの批判を受けて  片山 善博

 10〔弁証法〕誤解されたヘーゲル
   ――マルクス的解釈との関連で――  
   岩佐  茂
        
   ヘーゲルの略歴(活動と著作
) 
  
〔コラム〕
  ・ヘーゲルとフォイエルバッハ  西巻真人
  ・ヘーゲルとキルケゴール    須藤孝也 
  ・ヘーゲルとレーニン      岩佐 茂
  ・ヘーゲルとニーチェ      川野美玲
  ・ヘーゲルとハイデガー     片山善博
  ・ヘーゲルとポストモダン    待鳥はる代
  ・ヘーゲルとレヴィナス     馬場智一

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