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高野 範城(弁護士)著 法科大学院で学ぶ人へ ―― 何を大切にして弁護士は仕事をするのか―― 46判並製 339頁 本体 1900円 発売中
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最近,日本経済の変動や司法改革に伴って,弁護士の世界も大きく変化しつつあります。企業内弁護士や企業法務に従事する弁護士の増員の必要性が一部の経済界の人より強く主張されているのがそれです。その背景には,経済のグローバル化に伴う会社の合併・営業譲渡・新株の発行・知的財産権・外国との取引などの問題があります。他方,企業法務に従事する弁護士の大幅な増員に警戒的な弁護士もいます。その理由として,企業法務の弁護士は,大都市の,企業等の関与が中心であり,個人の生命・身体の尊重の事件や,企業等の利益追求で被害を受けた人々の救済の事件に関与することが少ないことをあげています。そこで,本書では企業が現代社会で有益な役割を多々果たしていることを認めた上で,他方では企業が公害等で住民へ加害行為をし,あるいは消費者問題で国民へ多大の不利益を及ぼす場合があることを前提にして,弁護士の企業への関与のあり方について述べています。そして,どちらの側の代理人になるにせよ,弁護士として踏み外してはいけない弁護士の倫理についても言及しています。ところで,今日の弁護士は,企業の規模を問わなければすべての人が,企業の事件に関与し,相談にのっています。それゆえ,企業法務に従事するか否かに関係なく,企業との関係で,どんなことに注意しながら弁護士は日常的に仕事をすべきかが問題になります。本書は企業と弁護士との関わりについて,企業の功罪と問題点を指摘しています。さらに,人によってどんな事件を重視すべきかは若干の違いがあるかもしれませんが,弁護士が心血を注いで取り組むべき事件や何を大切にして弁護士は仕事をすべきかについて,本書は過去の事件を取り上げて具体的に例示し,弁護士の役割と司法の問題点について述べています。(「本書を読む人へ」より)
第1章 弁護士の仕事と社会との関わり 1 弁護士を志す人へ 2 社会から期待される弁護士 ―― 私の歩んできた道との関係で―― 3 在野法曹としての弁護士 第2章 弁護士に求められているもの 1 若い弁護士に必要なことは何か 2 弁護士の使命とは何か 3 生活の安定と今後の弁護士の方向性 4 弁護士と依頼人の関係 第3章 企業活動と弁護士 1 企業社会と弁護士 2 企業の紛争の変化と弁護士 3 企業活動の影と弁護士の関与 第4章 福祉国家と企業社会の狭間で 1 福祉国家の視点から見た問題状況 2 個人・家庭の変容について 3 今日の企業の功罪と福祉問題 第5章 社会保障・福祉と弁護士 1 市場社会と福祉問題 2 日本の福祉法制と福祉の水準 3 社会保障・福祉と法律家の関与の重要性 第6章 今後の裁判と弁護士の動向 1 裁判を受ける権利の保障について 2 今後の裁判の課題 3 充実した人生を過ごすために |
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