2006年12月15日発売

有賀 克明(名古屋市立大学)前島康男(東京電機大学)編著

現代の子ども・教育・教師を読む

発売中

A5判並製 244頁 本体  1800円

 

今年で戦後61年を迎えますが,この間こども・青年をめぐって様々な問題が起こってきました。それは,例えば四次にわたる「非行」のピーク,二度にわたるいじめ(自殺)のピーク,体罰死,性的「非行」=援助交際,摂食障害,学級崩壊,アレルギーの増加,1970年代半ば以降2002年まで一貫して増え続けてきた不登校・登校拒否問題などなど,数えあげれば切りがないほどです。
 また,今日上であげた問題のほか,こどもの遊びと文化,学力問題,性と健康をめぐる問題などをめぐっても様々な問題が起こっています。さらに,今年小学校の学校選択制が全体の1割を越え,新入学生が0で,廃校になる学校が生まれた問題,君が代の強制,「不適格」教員の問題に象徴的なように,今日学校や教師のあり方も根本的に問われています。
 そして,憲法・教育基本法改悪が企てられるなど,戦後61年の今年は,大きな歴史の節目にあります。
 このような中で,以上の問題を総合的に検討し,諸問題の関連,共通した原因を明らかにすることが求められています。
 本書は,以上のような問題関心のもとに執筆されました。
 本書は,I 現代のこどもを読む,II 現代の教育を読む,そして,III 現代の教師を読む,の三部構成になっていますが,どの部分から読んでいただいても結構です。
 読者の方々は,本書を読むことによって,現代のこども・教育・教師がどのような状態におかれているのか,そして,かかえている問題は何か,また問題解決の展望はどこにあるのかなどの点をつかみ取っていただけるものと確信しています。
(「はじめに」より)

 目 次

 はじめに

I 現代の子どもを読む

第1章 子ども・若者と文化
  1 子ども・若者の今 
  2 「何か違う」「よくわからない」ものをどう理解するか
  3 子ども・若者の文化と学校
  4 異なる文化に教師はどう関わるか
  おわりに

第2章 遊びの発達理論の現代的構築
     ――発達的交替説から交差分化説へ――
  1 はじめに……ある手紙から
  2 交差分化説……その例話的紹介
  3 鬼ごっこに視点を当ててみた交差分化説
  4 探検遊びに焦点を当ててみた交差分化説
  5 おわりに

第3章 子どもと〈性〉
  1 はじめに
   ――子どもの〈性〉について考える観点――
  2 子どもの性行動と性的安全・性的健康
  3 子どもをとりまく性的環境
  4 おわりに
   ――〈性〉について学ぶということ――

第4章 子どもの健康と身体文化
  はじめに
  1 学校教育の歴史と現状
  2 教材としての文化をどう踏まえるか
  3 子どもの「内面のくずれ」について
  4 あそびの指導について  
  5 どんな子ども像・人間像を目指すか
  おわりに

第5章 子どもの学力と学び
  はじめに――「学力」という言葉の意味――
  1 「学力」についての社会的視点
  2 「学力」についての臨床的視点
  3 「学力」についての認識論的視点
  おわりに――指針としての学習権宣言――

II 現代の教育を読む

第1章 20世紀から21世紀の幼児教育へ
  1 21世紀はユニバーサルアクセスの時代
  2 20世紀後半の幼児教育実践・研究の成果
  3 21世紀は日本の幼児教育の焦点

第2章 いじめ問題と教育
  はじめに
  1 いじめの概念規定
  2 いじめ問題の歴史と現状
  3 いじめ問題の原因と本質
  4 いじめ問題克服の課題
    ――こどもの自己肯定感を育てる――
  おわりに

第3章 非行問題について考える
  はじめに
  1 非行とは何か
  2 少年非行の特徴的傾向
  3 少年非行の背景
  4 教師の課題
  おわりに――子どもの可能性への信頼――

第4章 子どもの生活と自然の今
  1 子どもと大人と自然
  2 自然からの逸脱
  3 自然と人間
  4 自然による教育
  5 人間の発達と自然
  おわりに

第5章 平和の課題と教育
     ――平和の価値をいかにして復権するか――
  1 人類の平和の到達点
    ――社会・世界認識における平和の価値――
  2 歴史認識としての平和
     ――歴史教育の課題としての平和――
  3 人格における暴力と平和
  4 平和への教育の構造

III 現代の教師を読む

第1章 教師のライフコースに学ぶ
  はじめに
  教師としてのライフコース上における課題
 (1) 被教育体験の持つ重さ
 (2) 新任期におけるリアリティ・ショックと
     教職アイデンティティの確立
 (3) 教職生活以外の生活経験が及ぼす影響
 (4) 「単調連続右肩上がり」モデルではない教師の発達と力量形成
  おわりに――教師を目指す学生と若い教師の皆さんに望む――

第2章 教師の歴史と教師教育の課題
  1 近代教師像の萌芽
  2 近代学校と国家主義教育
  3 大正自由教育運動と教師たち
  4 戦後教育改革と民主主義の教師像


 あとがき


   本書の執筆分担

 I 現代の子どもを読む
  第1章 新谷周平(千葉大学)
  第2章 加用文男(京都教育大学)
  第3章 田代美江子(女子栄養大学)
  第4章 新村博信(武蔵野美術大学)
  第5章 田中昌弥(北海道教育大学)

 II 現代の教育を読む
  第1章 大宮勇雄(福島大学)
  第2章 前島康男(東京電機大学)
  第3章 能重真作(NPO法人非行克服支援センター)
  第4章 有賀克明(名古屋市立大学)
  第5章 佐貫 浩(法政大学)

 III 現代の教師を読む
  第1章 山崎準二(東洋大学)
  第2章 斉藤利彦(学習院大学)

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