『1930年代の青春の画家たち』、『芳賀仭画集』(創風社刊)、でその活躍をしることのできる1930年代に活躍したプロレタリア画家芳賀たかしは漫画においても名作を残していた。
戦前、中村書店から発行された芳賀たかしの漫画は手塚治虫や松本零士さんも研究した。
『愉快な子熊・坊やの密林征服』に続く名作の復刻。『ぼくらの燈台・五少年漂流記』はそれぞれ、日本では、一つの美術館、図書館にしか所蔵は確認されなかった。
そこで、約65年の時を経て復刊を試みた。両作品とも、芳賀の故郷である石巻の海を身近に見た芳賀の画力が随所に生かされている。
『ぼくらの燈台』は、戦前に過酷で真摯な燈台の仕事、風物詩に光をあてた、貴重な作品。そして、『五少年漂流記』は、戦時中の、言論統制の部分以外は良質な内容だと思い、そこを除いての発行を決断した。極限状態の中で成長していく、子どもたちの姿が芳賀の画力で生き生きとに描かれている。
中村漫画には娯楽性の中に情操を養うことを目的として描かれた作品が多く、日本の良心的漫画文化の原点として位置づけられている。現在、石巻漫画館で芳賀作品の顕彰の動きが進んでいる。子どもたちをとりまく文化の質が問われている今、すぐれた漫画を残し続けていくことは重要だと思われる。