資本主義経済の進展と「技術開発」の結果、20世紀以降には一部の地域の人類は急速な経済成長と「生活の豊かさ」を得た反面、地球規模での「環境破壊(生態系破壊、温暖化など)」と「地域格差」および「核の脅威」が進行し、それが20世紀後半以降になって深刻な問題として顕在化してきました。
現在の「科学」と「技術」は「自然との共生」を基調とする「人類の文化」からは外れているように思われます。そこで、改めて「科学」と「技術」という文化とその歴史を見直してみたいと思います。
すなわち、この本では「科学」(自然を合理的に理解するための文化)と「技術」(科学を応用して生活に役立てるための文化)の違いを明確にし、分別することを視点とした「科学の歴史からみた世界史」の全体像を「世界科学史話」と題して紹介し、解説したいと思います。この本が「人類と自然(地球)との<共生>」のための基礎資料の一つともなれば幸いです。
目 次
第1部 序話
1話 古代中国における<自然>思想
1.自然の語意
2.無為自然と有為自然
2話 「科学」と「技術」の関係と相違
1.「科学」と「技術」の相違
2.文化としての「科学」と「技術」
3話 「科学」へのいざない
1.科学と方法
2.科学と教育:科学的「能力」とは能動的能力
3.科学と仮説:発見は大胆な仮説から
4.科学と哲学:仮説を設定するまでの思考
5.科学と成果:成果=能力×時間(力積)
第2部 近代科学の源流氈F西方の源流
1話 古代ギリシャの科学(BC.7〜BC.1世紀頃)
1.ターレスの「水の説」:元素説のスタート
2.ピタゴラスの「数論」:原子説のスタート
3.プラトンの「観念論」
4.デモクリトスの「原子論」
5.アリストテレスの「目的論」
6.アルキメデスの「力学」と数学
2話 古代ローマの科学(AD.1〜AD.4世紀頃)
1.ヘロンによる「原子論」の継承
2.ギリシャ科学の応用「技術」の登場
3.古代ローマ科学の特徴と現代批判
3話 中世の科学(AD.4〜14世紀頃)
1.キリスト教的自然観
2.スコラ哲学とUniversitas(学寮)の普及
第3部 近代科学の源流:東方の源流
1話 古代中国・インドの科学(BC.7〜AD.8世紀頃)
1.原子論的思考
2.インド数字:アラビア数字の起源
3.磁石の性質:指南車の存在
4.火薬の発明:エネルギー開発
5.紙と印刷術の発明
2話 アラビアの科学(AD.8〜13世紀頃)
1.「アラビア」の科学とは
2.古代ギリシャ科学の継承
3.幾何光学の進展:視野の拡大
4.アラビア数字と数学
3話 日本の科学(AD.17〜19世紀頃)
1.日本の数学「和算」の成立とその後
2.日本における「アルキメデス的科学」の萌芽と挫折
3.科学の「訳語会」の発足と「お雇い外国人教師」の導入
第4部 科学革命
1話 科学革命前夜(AD.13〜16世紀頃)
1.天動説と地動説
2.ギルバートによる電磁気学の発生
3.ガリレオの真空仮説と原子論の復活
4.科学の学会の発生とリアリズム運動
2話 科学革命期(AD.17世紀)の科学
1.「新科学」の形成
2.ボイルによる原子論の復活と展開
3.科学の学会「Royal Society」の成立
3話 産業革命期(AD.18〜19世紀)の科学と技術
1.商人と職人の台頭
2.蒸気機関の発明と輸送力の変革
3.技術開発の進展と「副作用」の内包
第5部 第2次科学革命
1話 科学の基本法則の転換(20世紀前半)
1.特殊相対性理論(1905)の登場:質量とエネルギーの等価性
2.量子論(1900年):量の原子論と原子モデル
3.不確定性原理(1927)と概念の立体構造
4.有限膨張宇宙説と宇宙モデル
2話 巨大科学とその「副作用」(20世紀後半)
1.核開発と核の脅威
2.湯川・朝永宣言(1975)の確認
3.理想と現実
おわりに(総括)
引用・参考文献
参考:
『江戸科学史話』