岩佐 茂編著 『環境問題と環境思想』 A5判上製 334頁 本体2000円 発売中 環境問題は、人間の経済活動のなかで生じる。それゆえ、環境を保護するためには、環境を破壊しないような経済活動のあり方が問われる必要がある。本書は、環境思想は環境保護のための基本的な考え方や理念、倫理であるという観点から、具体的な環境問題を考察し、環境思想を論じたものである。 第1章 システムとしての地球環境 稲生 勝(岐阜大学准教授) コラム 実践する環境哲学者アルネ・ネス コラム 里山と環境プラグマティズム 第5章 <干潟の思想>という可能性――沖縄泡瀬干潟と「交遊価値」 コラム ゲーム「甲虫王者ムシキング」の世界観 第9章 ドイツの環境倫理と環境保護――穏健かつ現実的な取り組み コラム 中国の環境NGO あとがき 参考:岩佐 茂著『環境の思想――エコロジーとマルクス主義の接点』
新刊案内(2008年 4月23日発売)
序 章 環境問題における不都合な表現 岩佐 茂(一橋大学教授)
はじめに
1 エネルギー問題にかかわる概念の不都合さ
2 温暖化問題にかかわる概念の不都合さ
3 Sustainable Development の解釈の不都合さ
4 おわりに――用語の使用法で問われるもの
第I部 今日の環境思想
はじめに――思想的課題としての環境問題
1 自然環境とは
2 「生物圏」をめぐる思想
3 システムとしての地球環境
第2章 ソーシャル・エコロジーと共生論 片山善博(日本福祉大学准教授)
はじめに
1 共生とは何か
2 ブクチンのソーシャル・エコロジー
3 ソーシャル・エコロジーと承認論――共生社会を目指して
4 承認をめぐるさまざまな議論
5 承認論と共生論
第3章 神としての自然――ディープ・エコロジーの思想史的考察
佐山圭司(北海道教育大学准教授)
はじめに
1 「神すなわち自然」――スピノザ
2 「有機体」としての自然――ヤコービとヘルダー
3 「主体」としての自然――シェリング
4 おわりに――ネスの「スピノザ主義」
第4章 環境プラグマティズムはなぜ自然の「内在的価値」を批判するのか
桂田亜希子(一橋大学大学院言語社会研究科博士課程在籍)
はじめに
1 自然の価値はいったいどのように説明されるのか
2 プラグマティズムにおける「内在的」価値
3 環境プラグマティズムにおける「内在的価値」の議論
4 文脈における価値を重視する環境プラグマティズム
5 おわりに
第II部 日本における環境問題と環境思想
小屋敷琢己(琉球大学准教授)
はじめに
1 沖縄市泡瀬干潟の埋立問題
2 泡瀬干潟の存在価値と「自然の権利」訴訟
3 「利用価値」思想への対抗
4 おわりに――干潟の「交遊」価値
第6章 景観倫理と景観責任――長崎・被爆遺構から考える
木村 博(長崎総合科学大学准教授)
はじめに
1 土地倫理から景観倫理へ
2 被爆遺構・新興善小学校校舎のケーススタディ
3 景観責任
第7章 プラスチックの環境問題を考える
吉木 健(ISOプラスチック専門委員会委員)
はじめに
1 プラスチックの用途
2 プラスチックが抱える環境問題
3 プラスチックの管理
4 プラスチックのリサイクル
5 生分解性プラスチックについて
第8章 子どもを取りまく外来甲虫事情――環境教育の視点から
神山智美(名古屋大学環境学研究科博士課程在籍)
はじめに
1 昨今の外来甲虫事情
2 外来甲虫問題の特徴
3 子ども文化のなかの外来甲虫事情
4 大人に求められているものは何か
5 おわりに――環境教育の重要性や文化のあり方が問われている
第III部 海外における環境問題と環境思想
熊坂元大(一橋大学大学院社会学研究科博士課程在籍)
はじめに
1 ドイツの環境倫理
2 行政の取り組み
3 民間からの環境保護運動
4 おわりに
第10章 韓国の環境思想と環境運動 水野邦彦(北海学園大学教授)
はじめに
1 環境問題の発生と環境運動
2 欧米環境思想の受容
3 韓国固有の環境思想
4 環境をめぐる今日の論調
5 緑色合理主義
おわりに
第11章 中国の古紙事情――上海市の事例から見えてくるもの
李 欣栄(環境アナリスト)
はじめに
1 上海市における古紙の回収利用の現状
2 上海市における古紙の回収利用のシステム
3 上海市における廃棄物の回収利用システムの問題点
4 上海市における回収利用システムの改革の展望
5 おわりに
岩佐 茂・劉 大椿編『環境思想の研究――日本と中国で環境問題を考える』
岩佐 茂・劉 奔(原博昭)編『グローバリゼーションの哲学』