本論文では,1990年代から現時点にいたるまでの東アジア諸国・地域における貿易を通じた分業関係の発展と変化の過程と要因を,主要産業の生産とその製品の貿易構造の分析を通じて明らかにする。中でも,中国製造業の成長は著しく,2006年には中国が日本の工業生産額を上回り,文字通り「世界の工場」として台頭している。中国製造業の成長は,日米欧先進国に対してだけでなく,これまで日米および域内での工程間分業を拡大させる中で成長してきた NIES や ASEAN 諸国の産業構造にも大きな影響を与えている。
これまで,東アジア諸国・地域の経済発展を域内分業関係の深化から分析したものは数多いが,それらは,中国の経済発展が加速した2000年以前のものがほとんどである。したがって,中国の経済発展が既存の東アジア諸国・地域の経済と域内分業関係に対してどのような影響と変化を与えているのかを分析し,既存研究との連続性と断絶を明らかにする必要がある。その作業は,東アジア諸国・地域の経済発展の実相と問題点を明らかにすることにもなる。
本論文の構成は以下の通りである。(「はじめに」より)
はじめに ――課題と方法――
第1章 1990年代以降の東アジア諸国・地域における国
際分業に関する諸説の検討
第1節 伝統的国際貿易論
第2節 新国際分業論
第3節 日系企業による東アジア諸国・地域の工場化
第4節 生産ネットワーク論
第2章 東アジア諸国・地域における製造業の発展と産
業構造の変化
第1節 1990年代以降における世界貿易の変化と東ア
ジア諸国・地域
第2節 国際分業進展の背景
第3章 東アジア諸国・地域における電気・電子産業の
発展と貿易構造の変化
――日本企業の進出と米国情報化関連投資の影響を中心に――
第1節 東アジア諸国・地域における電気・電子産業
の発展と特徴
第2節 東アジア諸国・地域における電気・電子産業
の直接投資受入れ
第3節 米国情報化関連投資の東アジア諸国・地域に
対する影響
第4節 東アジア諸国・地域における電気・電子機器
貿易
第4章 東アジア諸国・地域における重工業の発展と貿
易構造の変化
第1節 東アジア諸国・地域における自動車生産の拡大
と自動車部品貿易
第2節 東アジア諸国・地域における鉄鋼生産の拡大と
貿易構造
第3節 東アジア諸国・地域における工作機械生産の拡
大と貿易構造
第5章 2000年代における中国の工業生産の拡大と鉄鋼業
第1節 中国鉄鋼生産の急拡大と生産構造
第2節 中国鉄鋼生産の拡大を支える設備投資
おわりに ――結論と展望――
参考文献
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