(2012年11月13日発売)
文・千葉 直美(石巻市) 絵・阿部 悦子(石巻市) 童話・震災の石巻
|
石巻は3・11の大地震・大津波で約4,000人が犠牲になりました。水産業の復興,住宅の復興は少しずつ始まっています。しかし,目に見えない人間の心の復興はどうなっているのでしょうか。震災で亡くなったお父さん,そして残されたお母さん,サチコちゃんの物語です。
石巻に在住していて,この3・11を直接体験した2人の著者が,この大震災で傷ついた家族がどのようにして立ち直っていくかを描く。
(本文より)
サチコちゃんはお母さんと同じ布団に入って きのうの夜,眠りました。 「おはよう」お母さんの声が聞こえます。 「おはよう」サチコちゃんも言いました。 倒れたタンスや本箱の間に布団をしいて寝たのです。 お父さんを探しました。 「お父さん!」と大きな声で呼びましたが 返事がありません。 「お父さんは,まだ帰ってこないの。」 お母さんは,目を真っ赤にしていました。 お母さんは,朝ごはんの用意をしていません
……
電気もガスもなくて,お湯がわかせないから 暖かい飲み物が作れない。ごめんね。」 昨日の夜もビスケットだけだったのでお腹がすいています。 昨日,大きな地震と津波というものがありました。 サチコちゃんはお母さんの腕の中で 部屋の隅にうずくまって,地震がおさまるのをまっていました。 ぐらぐら,ぐらぐら ゴー,ゴー バタン,バタン 立っていることができません。 家の中の,机もテレビもひっくり返って床に落ちました。 茶碗もお人形も,割れたガラスの下です。 まもなく町じゅうに,スピーカーで大きなサイレンが鳴り響きました。 「津波」 ……
「水道からお水が出ないの。
、既刊案内 『震災の石巻―そこから』、『震災の石巻―再生への道』、本の検索