子どもは,自然が好きである。科学も好きである。自然も科学も大事に思い,科学を手段にして自然をとらえていくと,さまざまなことが見えてきて,楽しむ。本当の学びは楽しいものであり,自分が大きく変わっていくことを実感できる場面でもある。理科嫌いは,子どもの問題ではない。父母の問題でもない。理科嫌いになるように教育が仕組まれていると言ってもよい。その仕組みを取り除いて,子どもの心とからだの動きにそくして,民主主義と科学を背景に教える者がはたらきかけると,子どもは大きく育っていく。ここでは,厳しい教育統制の中で,そうした自然の教育の原点に立って創意工夫して取り組んだ教育実践の実際を紹介し,その教育学的意味を検討した。
第1部 子どもは学ぶのが好きだ
―どうはたらきかければ,子どもは伸びやかに学ぶか
1章 「やじろべえ」で科学の芽を……生源寺孝浩
2章 川に池を掘った子どもたち……大森 享
3章 高校化学の現場から、生徒を目の前にして
何をどのようにかえればよいか……盛口 襄
4章 動物園における子どもを対象とした体験的学習……並木 美砂子
5章 「自然」にはたらきかける教育実践の創造……三石 初雄
第2部 何が子どもたちを学びから遠ざけているか
―学習指導要領体制にこそ問題が
6章 新学習指導要領・理科を検討する……小佐野正樹
第3部 自然科学をすべての人々のものにするために―理科ではダメだ
7章 一般教育としての自然科学教育への期待……木村 忠彦 8章 科学における自然の価値を再考する……本谷 勲
9章 いま科学と科学教育を問う……島崎 隆
10章 自然科学教育論の再構成……北林 雅洋
11章 自然科教育が教科教育になるために……岩田 好宏
生源寺孝浩 岐阜県岐阜市立常磐小学校教諭 大森 享 東京都墨田区立更正小学校教諭
盛口 襄 渋谷教育学園幕張高等学校講師 並木 美砂子 千葉市立動物公園研究員
三石 初雄 東京学芸大学教育学部教授 小佐野正樹 東京都足立区立花保小学校教諭
木村 忠彦 千葉大学理学部教授 本谷 勲 東京農工大学名誉教授
島崎 隆 一橋大学教授 北林 雅洋 高校・大学非常勤講師
岩田 好宏 千葉経済大学附属高等学校・千葉大学教育学部・東邦大学理学部非常勤講師