大友 伸(東日本国際大学経済学部助教授)著
恐慌理論とバブル経済
A5判上製  222頁 本体 2400円 

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  資本主義経済における諸資本の競争上裏の展開は景気循環を生み出す。一般に,景気の上昇局面から進んでその最終段階では,まさに競争の結果として,諸商品の過剰生産が進行し,在庫一般の堆積が現われる。そこで資本蓄積は停止する。この時,信用上の異常な連鎖等によって,場合によっては恐慌という過激な反動が発生することもある。しかし,長短の時間が経過するのにしたがって在庫の一掃が実現されることで生産は回復し,投資も復活することになる。こうして景気循環は一回転し,資本主義は次ぎの高揚に向かって新たな循環運動を開始する。しかし。しかし,もし仮りに,そうであるならば,在庫が掃けて空になった商品棚や倉庫をもう一度商品で満杯にするのは,一度過剰生産を来たすまでに至った資本にしてみれば,実は造作もないことである。したがって,新たな循環が開始されるとは言っても,まさに天恵と言うべき市場の拡大でもないかぎり,また先と同じ位置で資本蓄積は停止せざるを得ないことになる。ところが,現実には,循環は必ず前回よりも高い位置に到達するのであり,さればこそ,経済成長という概念も存在するのである。前回と今回の循環を区別するものは何なのか。それは市場の拡大という単に外部的な,なかば偶然的な条件の変化などから説明すべきではない。本書の議論の中心は,単純な往復運動では説明することのできない神秘の循環,社会的生産の発達を資本の運動という形式において行なうことの真の意味を問うことにほかならない。そしてその実証としての意味において,日本のバブル経済を考察してみることになる。

目  次
序 章 恐慌論の課題            
第一章 恐慌論の方法                        
第二章 『資本論』第二部第三篇の理論的内容――
 『資本論』と恐慌論の関係についての考察(1)  
     第一節 恐慌論との関わりにおける『資本論』第
      第二節 『資本論』第二部第三篇の理論的意義   
     第三節 さらなる問題の提起           
第三章 マルクスの社会的総資本論 ――
    『資本論』と恐慌論の関係についての考察(2)
     第一節 剰余価値と利潤                
     第二節 平均利潤と社会的総資本論
     第三節 『資本論』第二部第三篇と平均利潤論
     第四節 井村喜代子氏の恐慌論について
第四章 利潤率傾向的低下法則と全般的過剰生産恐慌 ――
    『資本論』と恐慌論の関係についての考察(3)
     第一節 利潤率傾向的低下法則と競争
     第二節 生産方法の改良と商品価格の運動      
     第三節 全般的過剰生産への内的傾向
     小 括    
     第四節 逢坂充氏の恐慌論について
第五章 恐慌および産業循環の理論的構造              
     第一節 価値生産の展開と使用価値
     第二節 産業循環の物質的構造
     第三節 一般的価格膨張と全般的過剰生産
第六章 貨幣資本の過多について               
第七章 「電子技術を基礎とする日本企業の商品開発
     とバブル経済」
     I オイルショックの時期における日本経済
      の問題
     II 電子技術と商品生産
     III 消費の発達と反転
     IV 金融的条件による循環の増幅

第八章 21世紀に残された日本経済の問題
     第一節 消費不況について                
     第二節 構造改革について

あとがき

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