高野範城(1945年,北海道に生まれる。弁護士)著

社会福祉と人権
―― 高齢者・障害者の人権と国の責任――

四六判上製  220頁 本体 1500円

社会福祉と人権というテーマは今日の社会保障や社会福祉で最も重要なテーマです。本書は高齢者、障害者の人権が福祉の現場でどのように扱われているか、法律の定めのうえで人権の保障はどうなっているかを社会福祉に深い関心を持つ法律家の立場から、個別具体的な事例を採り上げながら多面的な角度から人権の問題を論じているところに大きな特徴があります。
 ………社会福祉の問題に限らず、人権の問題は抽象的に論じるのではなく、現実に発生した具体的事件を通じて論じてこそよく理解ができます。同様に、社会福祉や社会保障の問題は、憲法25条や法律の定めを「人と時間と場所」を抜きにして抽象的に論じてみてもほとんど意味をなしません。社会福祉や社会保障の利用者のおかれた具体的な状況と生活の実態を最大限重視し、その上で法の解釈や人権が論ぜられるべきです。その意味で本書は徹底的に具体的事実を重視して人権を論じています。社会福祉と人権に興味を持つ市民や大学生にとっては本書は社会福祉と人権の概説書にもなりうるかと思います。(本書「まえがき」より)

第1章 社会福祉で何故、高齢者・障害者の人権が問題となるのか  はじめに 弁護士と社会福祉 人権とは何か 社会福祉において人権が問題となる理由 人権侵害が問題となった事例 福祉の専門性と人権侵害の関係
第2章 憲法25条の公的責任と公的費用負担の意味するところ  
憲法25条の歴史的意味と国民生活の実態 所得の再分配こそ福祉の本流 公的責任と社会連帯 社会連帯と地域の絆
第3章 憲法25条の規範性について ――
社会権としての生存権 憲法25条の権利内容 憲法25条の規範性と財政 憲法25条と福祉立法についての若干のまとめ
第4章 高齢者の人権と福祉について――
生きがいを持てる健全で安らかな生活とは 国と企業の福祉についての理解 高齢になるとは 高齢者の所得と支出の特徴 国民年金の年金額は何故少ないのか 現行年金制度の問題点と宮公訴訟 福祉年金裁判の意味するもの 社会福祉と裁判の役割 加藤訴訟 中島訴訟 生活保護行政の実態 生活保護と年金の相違についてのまとめ
第5章 高齢者の自己決定権の尊重と介護・医療
自己決定権の尊重と社会権 自己決定権と費用負担 家族介護の現条と施設介護の関係 老人ホームについて 親子の情愛と老人ホームの設置場所 老人病院と福祉 有料老人ホームについて 自己決定と遺言をめぐって
第6章 介護保険と高齢者の人権について――
長寿は人間の権利 介護問題の背景 在宅重視と介護保険 介護職の常雇いと専門性 介護保険の問題点 介護保険と法律家
第7章 障害者差別の禁止と人権
障害者差別と偏見 障害者に対する人権侵害の態様  欠格条項 上野訴訟 堀木訴訟と裁判をうける権利 玉置訴訟 知的障害児の教育を受ける権利の保障 玉野訴訟 在宅投票制度廃止事件任
第8章 社会福祉と権利の擁護に関する諸問題
権利としての福祉の意味 第2次藤木訴訟 永井訴訟 介護保険と権利譲渡 介護保険とオンブズマン 成年後見と権利擁護  高齢者・障害者の福祉と消費者問題 福祉の専門性と社会の総合力の関係 社会福祉法人と利用者の権利 利用者の権利宣言を

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