今日,日本で産業集積が注目されるのは,1 経済における中小企業の役割への注目,2 中小企業をめぐる地域の環境(=集積)が持つ役割の重視,3「地方の時代」への関心の高まり,などによる。1990年代に入り,中小企業をめぐる環境と中小企業に対する見方が変化しているなかで,産業集積が地域内の中小企業や地域経済にどのような効果を与えてきたのか,また今後の経済・産業構造や技術の変化に対応していくために産業集積はどのような課題を持ってい
るのか,が問われている。
産業集積の研究は,本書第1章で触れているようにここ10数年間で急速に進展したが,方法論的,理論的に必ずしも確立したものではない。産業集積研究は,中小企業論,経済地理学,経済・産業政策論,地域経済論など,さまざまな分野の研究からアプローチが試みられている。そのため,同じ産業集積を対象としながらも,分野を超えた相互の対話が十分に成り立っているわけではない。
本書は,こうした産業集積研究の現状に対して,工業集積研究会が行ってきた東大阪地域の産業集積に関する共同研究の成果である。
序章 (植田)1 はじめに 2 本書の課題 3 本書の特徴 4 東大阪地域と産業集積
5 東大阪産業集積の特徴
第一章 産業集積研究と東大阪の産業集積(植田) 1 はじめに 2 産業集積への問題関心
3 1970年代以降の産業集積研究 4 東大阪地域の産業集積 5 おわりに
第二章 高度成長期以降の東大阪地域の産業集積―東大阪市域を中心に(中瀬哲史 大阪市立大学) 1 はじめに 2 高度経済成長期初期の企業の立地状況 3 高度経済成長期以降における事業所数の増加と立地地域の地理的拡大 4 東大阪市域の集積の形成・発展と企業 5 おわりに
第三章 東大阪地域における工場立地と地域的存立基盤(長尾謙吉 大阪市立大学)
1 はじめに 2 産業集積への経済地理学的アプローチ 3 産業集積の類型と東大阪地域
4 東大阪市域における工場の立地と存立基盤 5 おわりに
第四章 東大阪産業集積と中小・零細企業の事業活動(大田康博 徳山大学)
1 はじめに 2 産業集積としての東大阪地域の構造と特徴 3 産業集積を活かした中小・零細企業の事業活動 4 おわりに
第五章 東大阪の取引・分業構造(田口直樹 金沢大学) 1 はじめに 2 鋲螺産業における取引・分業構造 3 金型産業における取引・分業構造 4 おわりに
第六章 東大阪市における小零細製造業の取引関係―旧布施市南部柏田西・渋皮町地区における事例(義永忠一 桃山学院大学) 1 はじめに 2 調査対象企業と調査方法 3 A製作所の主要取引先との取引関係 4 相互に発注を行う企業との取引 5 主要外注先と相互に発注する企業との取引関係の違い 6 おわりに
第七章 東大阪地域中小製造業の金融(忽那憲治 神戸大学) 1 はじめに 2 東大阪地域の金融概観と分析データ 3 中小企業の銀行サービスに対する評価 4 八尾市中小製造業の資金調達の現状分析 5 おわりに
第八章 自治体産業政策の形成――その形成と類型(桑原武志 大阪経済大学) 1 はじめに 2 自治体産業政策――東京・大阪の4自治体の事例として 3 東京と大阪の比較―政策形成とその類型 4 おわりに
終章(植田)1 東大阪地域と産業集積 2 東大阪地域産業集積の強みと弱み 3 東大阪地域産業集積の課題 4 おわりに
あとがき
参考:
植田浩史編『「縮小」時代の産業集積』A5判上製 280ページ 2800円
植田浩史・本多哲夫編『公設試験研究機関と中小企業』A5判上製 324ページ 3200円
その他創風社の中小企業をテーマとした本(既刊)
相田利雄・小川雅人・毒島龍一・川名和美著『増補・現代の中小企業』A5判並製 466ページ 2900円
平野 真著『技術者のための起業マニュアル』A5判並製 296ページ 2600円
小川雅人・毒島龍一・福田敦『現代の商店街活性化戦略』A5判上製 202ページ 2800円(平成16年度商工中金の中小企業研究奨励賞を受賞)
福田敦・毒島龍一・小川雅人『地域商業革新の時代』A5判上製 256頁 本体2400円
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