現代工業経済論の初版が刊行されてから約10年が経過した。この10年は日本にとっても、世界にとっても疾風怒涛の10年,激動の10年であった。その主要な内容は,1 ちょんまげ「社会主義」の崩壊,2 日本でのバブル崩壊と長期不況,3 世界経済の大地殻変動一急速な技術進歩とギャンブル資本主義のグ ローバル化であろう。
現在世界史の流れの速度は極めて速い。明治維新,敗戦直後のように,既存の体制・システムが腐朽し,体制の変革が要請されている世界史の転換期には,2−3年が普通の20−30年の速度で変化するのである。実際に金融再編・産業守衛のデータは,原稿完成後,初校,再校を重ねる間に数回の訂正を余儀なくきれた。
現代は政治経済学の眞贋を鋭く問うており,庶民レベルでの経済学の認識が, 世界史の流れを決定する。正確・的確な政治経済学的認識による社会的経済的矛盾の別挟と変革の展望の提示のみが,日本に明るい希望と将来をもたらしうる。本書がそのための一助になれば幸せである。(「新版へのあとがき」より)
目 次
第1章 現代工業と工業経済論……………………………富 澤 修 身
一 はじめに――若干の経済指標から見た現代工業
二 資本主義工業の基本的性格
三 工業活動の分類と統計
四 産業連関と地域的分業
五 工業経済論の対象と方法
六 現代工業が提起している諸問題
第2章 産業革命と工業化の進展………………………土 屋 慶 之 助
一 産業革命についての諸見解
二 イギリスの産業革命と工業化の進展
1 産業革命の前提諸条件の形成
2 産業革命の展開
3 農業革命の終了
4 交通革命
5 産業資本の確立
6 「世界の工場」イギリス
三 アメリカの産業革命と工業化の進展
1 産業革命の前提諸条件の形成
2 産業革命の展開
3 交通革命と国内市場の形成
4 産業資本の確立とその後の工業化の進展
第3章 資本主義的工業の基礎理論………………………小 坂 直 人
はじめに
一 労働過程と価値増殖過程
1 労働過程
2 価値増殖過程
二 不変資本と可変資本
三 剰余価値率と労働日
1 労働日の限界
2 標準労働日のための闘争
四 絶対的剰余価値と相対的剰余価値
五 資本主義的生産様式の生成と展開
1 協 業
2 分業とマニュファクチュア
3 機械と大工業
4 むすびにかえて
第4章 独占段階の工業と資本蓄積………………………金 田 重 喜
一 自由競争と生産の大規模化
二 資本の集中・集積と独占の形成
三 独占的結合の諸形態
1 カルテル
2 カルテルと国家〔(1)関税・輸入制限によるカルテルの保護,
(2)強 制カルテル,(3)独占禁止法,(4)独占的協定と独占
的競争〕
3 トラスト(企業合同)〔資本提携と業務提携,研究開発での業務
提携,生産での業務提携,OEM供給,部品,規格の共通化,規
格の統一,物流での業務提携〕
4 コングロマリット(多角化)
5 金融資本
四 独占による市場支配=競争制限の方法
1 垂直的統合による支配
2 水平的統合による支配
3 特許権の独占による拘束的取引
4 コングロマリット化による競争制限
5 その他の独占的手段
五 独占的蓄積の社会的性格
1 生産過程――産業合理化,テイラ−・システム,フォード・システム
2 社会的生産過程――独占と中小企業
3 独占価格・独占利潤・ 支配利潤――社会的収奪と腐朽性
第5章 現代日本の工業経済…………………………………富 澤 修 身
――企業,産業,産業構造――
一 はじめに
二 現代の工業企業
1 リストラクチャリング
2 企業内世界分業の展開と空洞化
3 労働力編成と労使関係
4 企業政策
三 現代の産業組織
1 グローバル競争
2 新たな協調・提携関係の形成
3 事業合併ないし経営の統合,資本関係の強化
4 生産系列の変化
5 産業政策
四 現代の産業構造
1 日本の産業構造転換
2 日本の産業連関の若干の特徴
3 産業構造政策と勤労権
第6章 グローバル化とアジア工業化……………………石 上 悦 朗
――国際輸出加工基地の光と影――
一 1980年代から90年代へ――拡大する経済格差とアジア経済の発展
二 アジアの国際輸出加工基地化
1 アジアNIESからASEAN諸国工業化,そして中国の参入
2 日本―アジア国際分業の特徴――「組み立て」競争は持続可能か
三 グローバル化とアジアにおける労働
1 「国際労働基準」と米国労働組合の主張
2 アジアの国際輸出加工基地化と労働
旧版あとがき…………………………………………………………金 田 重 喜
新版あとがき…………………………………………………………金 田 重 喜
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