イラク戦報道が流れた後、詩人から呼びかけがあった。佐相憲一は「FAX連帯行動 NO WAR!」で「今こそ力ある詩をうみだしてほしい」と。方法の異なる詩人たちへも「詩以外の方法、機会において」「人間としての反戦の思いを世に発言してほしい」、「尊いその心で、きっと祈り続けてほしい」「それぞれのやり方で、命に連帯しようではないか!」と発信する行動力に圧倒される。
詩人会議でも反戦リーフの緊急発行が進められている。
もう一つは「反戦詩集参加の呼びかけ」だった。毎日新聞によると、大統領夫人ローラ・ブッシュが計画
し、二月十二日に予定していたシンポジウムが、イラク攻撃反対の動きを懸念して中止された。招待を受けていた詩人サム・ハミルは反戦詩運動を呼びかけ、それに応えて多くの反戦詩が寄せられた。三月五日、イラク攻撃に反対する詩人は米議会で反戦詩を朗読した。ホームページには一万三千通の反戦詩が届き、約二百編の詩を四月に出版する計画だという。ハミルのアピールが日本の詩人木島始に転送され、日本での活動が始まったようだ。ホームページ「Kjm(本島始)の部屋」にその応答が掲載されている。公募した反戦詩を四月十日直後に日本政府あてに送り、後で冊子にまとめる。呼びかけ人は石川逸子、本島始、甲田四郎ら。
今回のイラク攻撃では、月刊誌で動向を探るのでは追い付けない。インターネット上の紹介となるが、数
多くある詩のサイトの中で、イラク戦について積極的に取り組んでいるものを紹介しておこう。一つは水尾佳樹の運営する〈pocom〉が最も充実していて、詩で反戦を訴えていく投稿欄、さまざまな反戦・平和アクション活動へのリンク、反対署名の呼びかけなども行っている。また、河井澪の運営する〈po-s.net〉でも、反戦アクションのページ〈no war!〉を緊急開設し、自作の反戦詩を首相官邸に送ったほか、アクセスして首相官邸、外務省、国連広報センターなどに送信できる。ネットの力を手にした詩人たちの行動は、今活発である。(近野士心夫・詩人)
赤旗2003年4月
前回(四月二日付)紹介した米詩人サム・ハミルの提案に日本で応じた「反戦詩集参加の呼びかけ」に対して二百九十名以上の詩人の作品が集まり、十五日、内閣府に提出された。
このうち約三十編が英訳され、ブッシュ米大統領とブレア英首相、国連本部に送られる。作品は、呼びかけ人の一人佐川亜紀のホームページ「戦争に反対する詩のページ」で読むことができる。
最年少は小学三年生、現在百七十編以上が掲載され、以後も順次アップしていく予定であるという。いくつかを紹介しよう。「ぼうや、よくみてごらん/あの夜空をいろどる無数の光は/花火でもテレビゲームでもありません/爆弾でとびちる人びとの命のしぶき」(井之川巨「武器はみんな捨てろ」)、「声をかけよう ひとりの悲しみが/ひとつの恨みにかわってしまわないように」(山本聖子「それでもわたしは」)、学校で学んだ〈愛〉や〈夢〉を描いているであろう子どもたちを想定して「黒板消しはいらない//爆弾が落ちてきて/それらを一瞬のうちに/消す」(高階杞一「戦争」)など、反戦の思いが強く伝わってくる作品ばかりだ。
『詩人会議』では、ハミルのアピールに応えた四名の米詩人の詩が五月号に翻訳・掲載されている。また、短期間に多くの作品が寄せられて制作した緊急パンフ『戦争をとめよう』一、二集も発行された。
現在、事態が転機を迎えフセイン政権崩壊という状況に立ったときにも、それらの作品は屹立(きつりつ)していなければならない。詩人たちの想像はもっともっと広がっていかなければならないのだ。サム・ハミルらの出したメッセージ、
「たとえ、この戦争の『終結宣言』がなされても、われわれの運動は終わるものではない(略)。ブッシュ政権がどんな言葉でわれわれを説得しようとしても無駄だ。われわれはブッシュ政権が、朝鮮、イラン、シリアその他の国々に脅しをかけていることを軽視してはならない」という言葉に思いを新たにする。(近野十志夫・詩人)