木島 始(1991年法政大学教授を退く。詩人,児童文学者)著

飛ぶ声をおぼえる

46判上製 162頁 本体 1300円 

発売中


 この『飛ぶ声をおぼえる』には、文章だけの再録をする許可をもらったA・ラマチャンドランの「ヒマラヤのふえ」だけ、翻訳が収められている。ラマチャンドラン氏は、インドのきわめて独創的な画家で、ヨーロッパや日本の絵の伝統とまったく異なった、発想そのものがちがう画風の持主である。物語りそのものも、次元のちがう人格化を含んでいて、あっけにとられる。
 "The Land of Ramol"と題された英文のタイプ原稿から、わたしは、かなり考えたすえ、『ヒマラヤのふえ』という日本語の絵本題をつけることにして、福音館書店から出したのであった。この絵本は、そのわたしの改題のまま英語テキストをSayuri Suzukiがつくり、"The Flute in the Himalayas"としてラボ教育情報センターから、出され続け、生き残ることになったので、日本国内でラマチャンドラン氏の独創的な絵本が、日本語版と英語版とが別々に出たしだいであった。
 「マヨイノもりの五つのむかしばなし」は、『ゴロベエむかしばなし』(理論社)という一冊の本を、そのまま収めることにし、題名を変えた。「うたものがたり 雲の中のピッピは、わたしと作曲家林光との最初の共同作品で、初演は、一九五五年。その初演のままのが林光歌曲集『空』(全音楽譜出版社、一九七六年)に収めてあり、何回か放送上演されたのち、歌の部分以外かなり書き改めたのを、ここに収めている。いま思いかえすと、憎らしいばかりに野性的なヒヨドリを、果たして子どもたちが、傷をいやすまでに飼うことができるか、どうか。解けない難問を、このわたしの最初に書いた童話にもちこんだようである。
 「夜空の顔……三つの声がものがたる」は、一九五二年に書いて第一詩集に収めた長詩「星芒よ瞬け」を、NHKの放送詩集用に書き改めた作品で、詩集『ふしぎなともだち』に収めてある。この詩の一部を中央公論社版「日本の歴史」学童疎開経験として引用されたことがあり、わたし自身は、そういう経験をしたことがなく、もう少し年長であったので、作者自身の経験でないことがわかるように再版で修正してもらうということがあった。
 「シャボンだま」と「虫のいどころ」は、創作集『ともかく道づれ』からこの本に収めた。
 八篇の詩は、詩集『はらっぱのうた』『朝の羽ばたき』『パゴダの朝』からと、詩集に収めていない「恐竜のたましい」とで、成り立っている。
 なかで「みなもとのうた」のなかの九行には、文字のなかの文字という〈仕掛け〉があるので、漢字を上と下と見くらべながら、よんでもらえればと願っている。(「あとがき」より)

目次

詩 恐竜のたましい 
ヒマラヤの笛  
ラマチャンドラン
シャボンだま
詩 くさきのせせらぎ
マヨイノもりのむかしばなし五つ
(ふにゃふにゃどろぼう、けちいちばん、そっくりかえりこじき、うんまげえっ、レンギョさま)
虫のいどころ
詩 ぬけみち     
うたものがたり 雲のなかのピッピ

詩 つまりそのう
詩 りんごをかじる
夜空の顔……
三つの声がものがたる
詩 みなもとのうた
詩 やっと自由に飛べるとき
詩 小さな鳥へのほめうた

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