世界は今国際秩序の混迷期にあり,日本も多様な安全保障上の脅威にさらされるようになっている。海洋国家日本が21世紀においてこれら脅威を抑止し,プレゼンスと繁栄を維持するには日中関係をはじめとする二国間,地域,グローバルの各レベルで「多面的な抑止外交」を展開しなければならない。現代日本外交をとりまく諸課題につき「秩序」,「歴史」,「価値」という3つのキーワードを使い現役外交官が分析する。
目 次
はじめに
第一部
第一章 日中関係の構造 ――溶ける氷と溶けない氷
一 台湾問題
二 歴史問題
三 東シナ海問題
四 体制の相違
五 日中構造問題と米国との関係
六 まとめ
第二章 台湾問題の構図 ――三者三様の現状維持
一 台湾側から見た状況(台湾における民主化進展と民意の安定)
二 中国をめぐる状況
三 中台の軍事バランスと米国の軍事介入可能性
四 米国の政策(曖昧政策の改善)
五 今後の両岸関係
六 まとめ(日本がとるべき政策)
第三章 歴史問題―― 南京事件を中心に
一 南京事件の問題の所在
二 南京事件の構造
三 南京事件の争点
四 南京事件の政治性――慰安婦問題との比較を踏まえて
五 南京事件に対する日本政府の姿勢
六 まとめ
第四章 日本のアジア外交――地域秩序の創造に向けた積極外交
一 アジアの中の日本
二 アジアにおける唯一の先進民主主義国家日本
三 冷戦直後におけるアジア情勢と日本の認識
四 アジアの現状
五 重層的構造の「地域秩序の創造」に向けての積極外交
六 地域協力の重点分野
七 日米中の三国関係
八 まとめ
第二部
第五章 「価値の外交」――自由と民主の国際秩序をめざして
一 「価値の外交」、「自由と繁栄の弧」とはなにか
二 「価値の外交」の戦略的意味
三 国際秩序形成への参加と安全保障の確保
四 日本が「価値」を打ち出せなかった理由
五 「価値の外交」のマイナス
六 「価値の外交」は日本の外交戦略の変更か
七 日本流の「価値」の模索――特色あるグローバル・パワーとして
八 まとめ
第六章 日本外交とパブリック・ディプロマシー
――ソフトパワーの活用と対外発信の強化に向けて
一 パブリック・ディプロマシーとは何か
二 ソフトパワーとパブリック・ディプロマシーの関係
三 諸外国のパブリック・ディプロマシー
四 新時代のパブリック・ディプロマシーの特徴(市民社会、価値、新秩序)
五 日本のソフトパワーは強いか
六 日本のパブリック・ディプロマシーの現状と課題
七 日本の政策発信の強化
八 まとめ
第七章 二十一世紀における日本のグローバル外交
――環境、開発、平和の三協力を中核に
一 環境協力
二 開発協力
三 平和協力
四 まとめ
最終章 海洋国家日本の進路――あとがきに代えて
立読みのページ 第6章(p233-241)