本書では最近書き溜めてきた三つの論文を一冊の本として公表する。第一に「資本蓄積と労働者階級の運命」,第二に「いわゆる本源的蓄積(第三部を含む)――封建的生産様式から資本制的生産様式への転化」,第三に「『資本論』第一部初版と本源的蓄積論」である。
これらは相互に密接に関連しあうものであるが,第一の論文は,資本蓄積と労働者階級の運命を,すなわち労働者階級の運命を,資本蓄積運動を資本の絶対的過剰生産との連関で,近代的産業循環の通過する運動形態のもとで,考察せんとするものである。第二の論文は,農業の資本制的生産と近代的土地所有との関連を,本源的蓄積過程を踏まえて考察し,もって資本制的農業生産の意味を検討せんとするものである。第三の論文は,両者の前提をなす商品生産,価値生産の意味を,すなわちA・スミスを混乱せしめた二つの商品生産,単純商品生産から資本制的商品生産への転化を,その土台をなす本源的蓄積論の視点から解明せんとするものである。
目 次
第一章 資本制的蓄積の歴史的傾向
第1節 近代社会の経済的運動法則
(1) 資本制的蓄積の歴史的傾向
(2) 恐慌と産業循環
第2節 第7篇 蓄積過程 第23章 資本制的蓄積の一般的法則
(1) 資本の構成が同等不変であれば労働力に対する需要は蓄積につれて
増大する
(2) 蓄積とそれに伴う集積との進行中における可変資本部分の相対的減少
(3) 相対的過剰人口または産業予備軍の累進的生産
一般的利潤率の傾向的低下の法則,法則の内的諸矛盾の展開
(4) 相対的過剰人口の様々の実存形態 資本制的蓄積の一般的法則
おわりに
第二章 いわゆる本源的蓄積(第三部を含む)
―― 封建的生産様式から資本制的生産様式への移行 ――
第1節 重農主義
第2節 第三部 第6章 超過利潤の地代への転形
(1)緒論
(2)「資本制的地代の発生史」「貨幣地代」,「分益経営と農民的分割地所有br> (3)第7章 収入とその源泉
分配諸関係と生産諸関係,諸階級
第3節 第一部 第24章 いわゆる本源的蓄積
(1)大工業と農業
(2)相対的過剰人口の様々の実存形態
(3)資本制的蓄積の一般的法則の例証
第三章 『資本論』第一部初版と本源的蓄積論
第1節 1859年『経済学批判』
(1)「1861-63年草稿」の本源的蓄積論
(2) 「1863−65年草稿」の本源的蓄積論
第2節 1867年『資本論』