歴史学は,過去の個別的史実を,太古から現代まで,また世界の諸民族の歴史まで,可能な限り多くの史実を明かにし,それを学び知ることによって幅ひろく人類史の全体像に迫ることに努力し,知ることによって歴史の流れを感じることが必要である。正確なる実をひろく深く知ることによって生れる歴史の流れへの感覚こそ歴史観であり,歴史意識である。この感性を鍛えることが歴史の学び方である。だが,学としての歴史学はそこにとどまることは許されない。史実をふまえ,感性を基礎としつつ,なぜそのように歴史が流れたのかを科学的に,必然の論理で構成しなければならない。それが歴史発展の法則の究明である。(本書 第2章より)
目 次
第1部
第一章 歴史意識(の貧困)
第一節 日本人の歴史意識
1. 歴史意識貧困の原因
2. 歴史意識を鍛えるための学び方
第二章 学としての歴史学の課題
第一節 歴史法則をとらえるための視点
第二節 生産力水準と経営規模
第三章 歴史の発展法則
第一節 「本源的経営」
― 第一則 ― 「本源的生産様式」
第二節 階級分化の論理
― 第二則 ― 「本源的生産様式」 から「二次的
生産様式」への転化
第三節 次の段階への移行 ― 第三則 ―
第四節 本源的経営の規模と発展段階
第四章 世界史発展法則の論理構造
第一節 原始的共同体
第二節 古代アジア的専制国家
― 農業共同体を基礎とする社会 ―
(1)本源的経営 (第一則)
(2)階級分化の形態 ― 貢納性 (第二則)
(3)アジア的生産様式社会の構造
(4)アジア的専制国家から古代国家への移行
(第三則)
第三節 古代奴隷制社会
― 複合大家族を基礎とする社会 ―
(1)本源的経営 (第一則)
(2)階級分の形態 ― 奴隷制 (第二則)
(3)古代奴隷制社会の構造
(4)古代奴隷制社会から封建社会への移行
(第三則)
第四節 封建社会
単婚小家族を基礎とする社会
(1)本源的経営 (第一則)
(2)階級分化の形態 (農奴制) ― (第二則)
(3)封建社会の構造
(4)封建的商品経済の展開
(5)商品経済の発展と封建社会の崩壊
第5節 資本主義的生産様式の社会
(1)本源的経営 (第一則)
(2)階級分化の形態 (第二則)
第2部
1.古代オリエントにおけるアジア的生産様式
の構造と段階
2.ミケーネ的諸王国とアジア的生産様式
3.「通史への挑戦」(「書斎の窓」)
4.経済史 研究40年
5.アジア社会観の変化
― 生産様式論争の復活によせて ―
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