現在のわが国のマルクス経済学界の研究動向をみると、どちらかといえば、日本経済や世界経済の現状分析、ワ−キンク・プアや世界的な金融・財政の危機、少子化傾向や高齢者の介護、各国間の貿易摩擦や世界的な経済成長率の鈍化、食料自給率低下、等々の分析にふりまわされ、マルクス経済学の基礎的研究、すなわち、『資本論』そのものにかんする研究がおろそかにされているようにみえる。かつては、先学たちのなみなみならぬ、それこそ血のにじむような地道な努力によってつみ重ねられてきた『資本論』それ自身の研究は、むしろ極端にいえば、いまではわきに押しこめられている感がある。マルクス『資本論』の研究は、世界的にみても、わが国が誇りとすべき学問的財産であるにもかかわらず、それが世間受けのする、現実問題の分析に押されて、いまでは、おろそかにされているようにみえることは、まことに残念なことである。もちろん、今日的諸問題の研
究は望ましいことであり、これこそは、マルクス経済学研究の最高・究極の目標であるが、そのためには『資本論』の研究は不可欠の理論的な基礎をなしている。われわれのみるところでは、こうした現実研究は、『資本論』自体の基礎的な研究と理解なしには意味のないことである。したがって、かつての研究の蓄積をふまえながら、『資本論』自体の活発な研究が行なわれてしかるべきではないであろうか。
目 次
序 文
第一章 商品と貨幣の理論
第一節 序論
研究の出発点としての商品の研究
第二節 使用価値
第三節 価値
第四節 貨幣
価値形態または交換価値
第五節 商品(および貨幣)の物神的性格
第六節 交換過程論
第二章 価値の生産価格への転化
第一節 費用価格
第二節 利潤と利潤率
第三節 平均利潤と生産価格
第三章 競争論
第一節 生産価格の形成
第二節 市場価値の形成
第三節 価値の生産価格への転化
第四章 総計一致の二命題 いわゆる「転化問題」
第一節 問題の提起
第二節 費用価格の生産価格化
第三節 総計一致の二命題の発展
第四節 平均利潤概念の発展の意義
第五章 「虚偽の社会的価値」の本質
第一節 差額地代一般の概念
第二節 農業差額地代
第三節 「虚偽の社会的価値」の意味
第六章 位置の差額地代・
第一節 予備的考察
第二節 第一形態の位置の地代
第三節 第二形態の位置の地代
第七章 土地所有の理論的基礎
・ 第一節 マルクスの絶対地代論
第二節 絶対地代概念の新規定
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