「学校からの排除」問題に焦点をあてた本書の意義は,まずは本文そのもので確かめていただきたいが,日本における停退学処分にあたるその処分は,スコットランドでは可能性としては義務教育開始年齢の5歳から可能であり,本書で触れられているように,子どもと家族に多大な影響を与えてきたのである。
単に精神的打撃を与えるのみならず,その後の学歴達成・学業成績・学業資格の獲得の妨げになっており,ひいては雇用確保の困難にまでつながるものである。それは,EU およびイギリスにおける社会政策スローガンの1つである「社会的包摂的処遇」に反する,教育における社会的問題の1つに数えられるものなのである。本書は,そうしたEU ならびにイギリス全体の課題とも結びついた教育における「社会的排除」の現象である「学校からの排除」にかわる道を模索するスコットランドの実践的格闘を伝えるものであり,格差と貧困化の拡大が懸念される日本社会での停退学問題の性格を捉えなおすうえでも示唆的な学術書であり実践の書でもあるところに大きな意義が認められるものなのである。(訳者あとがきより)
(目次)
第1章 排除と排除された生徒
第2章 排除はどこまで広がっているのか?
第3章 政策に関する問題
第4章 学校エートスと排除
第5章 制裁と支援:“挑発的な”行動への学校の対応
第6章 排除処分を避けるために校内で生徒たち(そして教師たち)を支える
第7章 学校の外で――包摂的処遇にかわる方策はどれだけ効果的か?
第8章 「もう1度一緒に学校へ」? 異なる国々での包摂的処遇と排除の視点
第9章 排除ゼロに向けて?