本研究は,デュルケーム社会学を経済学的観点から分析し,デュルケーム社会学に内在する経済的側面の重要性を明らかにすることを目的としている。さらに,このことを通して,逆に,経済学が無視してきた社会的側面を考察し,自由主義を基調とした当時のフランス主流派経済学やマンチェスター学派等への批判を下地にして,エミール・デュルケーム(1958―1917)の「社会経済学」が,実は方法論的個人主義に立脚し,社会から独立した個人像を想定する伝統的な経済学の抱える問題を乗り越える一つの手掛かりを提供していることを明らかにする。社会学の巨匠として,社会学の領域において膨大な数のデュルケーム研究が存在している。この時期,多くのデュルケーム研究書が刊行され,その流れは1980年代になっても続き,デュルケームの方法論,宗教論,認識論等,デュルケーム社会学の様々な側面に焦点を当てて分析が行われている。しかし,それらはデュルケームの社会学的方法や宗教杜会学に関して大きなウェイトが置かれており,デュルケームの経済的側面に関する研究は少ない。また,経済学においてデュルケームが参照されることはほとんどなく,経済学の分野からのデュルケーム研究は全く不十分といわざるをえない。デュルケームが対峙していた近代杜会とは,デュルケーム自身が認めているように経済杜会であり,デュルケーム杜会学において経済的領域の分析は欠くことのできないものといえる。それゆえ,デュルケーム社会学に内包する「社会経済学」を経済学の中で発掘することは,社会学においても軽視されがちであったデュルケームの経済的側面を「社会経済学」として再評価するという点でも重要である。
目 次
序
第一部 デュルケーム社会学の経済的領域
第一章 社会分業論の構造 第二章 デュルケームと経済――経済学批判から社会経済学へ―― 第三章 デュルケームの「社会経済学」 補論 デュルケーム「社会経済学」の経済思想史的位置
第二部 デュルケーム社会理諭のミクロ・アプローチ:ゲーム論による現代社会制度分析
第四章 デュルケーム社会理論における制度変化 第五章 デュルケーム社会理論のゲーム論的解釈
参考文献 外国語文献 日本語文献
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