新刊案内

有江大介著
(2017年以降発行予定)

ジェレミー・ベンサムの経済思想:      欲求・功利・公共性

A判上製  350頁 定価 3500円

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 W・スターク版のJeremy Bentham's Economic Writings(1951-54)の出版時期を除いて振り返られることのほとんどなかった、経済学者としてのベンサムを哲学・方法・政策の各側面から再構成する。その意義は以下の諸点にある。まず第一に“忘れられた経済学者”の池からベンサムを救い出し、18―19世紀イギリス経済学の系譜の中に正当に位置付けること。第二に、「立法の科学」(science of legislation)として構成されたベンサムの法学体系の一環と目された彼の経済学に、功利主義を基礎とした論理的・方法的一貫性を備えた固有の存在意義があることを明らかにすること。第三に、ナポレオン戦争後の通貨危機状況に構想されたベンサムの政策提言が持っていた理論内容を抽出し、それが現代貨幣経済理論の先駆と成りうることを指摘すること。第四に、以上を通じてベンサムの経済思想こそ、近代に固有の啓蒙の科学としての経済学のエッセンスを先駆的に体現していることを確認する。そうして始めて、例えばマルクスがなぜ近代ブルジョア社会を「自由、平等、所有、そして、ベンサム」と特徴付けたのか、また、なぜ功利・効用主義を前提とした新古典派経済学が、ロールズやセン等から多くの批判にもかかわら位にとどまり続けることができるのかを、理解できるのである。補足的に、日本における功利主義、ベンサムの学問的受容のあり方と研究史の回顧的評価も行う。

C 目次案

 1 序章

 2 哲学:欲求・功利・公共性

  2,1 啓蒙における世俗的功利主義

  2.2 快楽主義と宗教批判(関東学院『経済系』論文、1997)

  2,3 ベンサムにおける近代性:計算・経済・進歩

 3 方法的前提(英文革稿有り、HETSA1999)

  3.1 経験的方法

  3.2 方法論的個人主義

 4 功利の概念と最大宰柵原理(英文}稿有り、HETSA1999)

  4.1 功利(utility)

  4.2 最大幸福原理(utilityprinciple)

 5 主義の概念(英文草稿有り、HETSA1999)

  5.1 消極的正義の伝統

  5.2 消極的正義の伝統におけるベンサム

 6 ベンサムの経済学と立法の科学

  6.1 アートとサイエンス

  6.2 スポンテ・アクタ、アジェンダ、ノン・アジェンダ

 7 ベンサムの救貧政策構想(深貝篇ミネルヴァ本論文の一部、1994)

  7.1 救貧の根拠:便宜としての救貧

  7.3 救貧の手段:経済政策としての救貧

 8 ベンサムの経済政策提言の方法論的含意(英文草稿有り:HETSA2000)

  8.1 ベンサムの初期経済政策案:アジェンダの拒否

   8.1.1 利子制限の撤廃

   8.1.2 植民地の放棄

   8.1.3 国家介入の回避

  8.2 ベンサムの通貨政策案

   8.2.1 第一次地金論争

   8.2.2 貨幣的変動と人的要因:積極的公人

   8.2.3 インフレーションヘの危棋:消極的介入

 9 18-19世紀イギリス政治経済学におけるベンサム

  9.1『経済学の手引き』の世界

  9.2 スコットランド・コネクション:スミスとJ.ミル

  9.3 マルサスとベンサム

  9.4 キリスト教経済学とベンサム

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