(2018年3月30日更新 4月12日発売)
小川雅人(千葉商科大学)編著 中小企業の経営と診断 ―― 持続ある社会活動の経営支援に向けて ―― A5判並製 292頁 本体2200円 発売中
「診断」を広辞苑で見ると「医者が患者を診察して病気を判断すること」であり,「ものごとの欠陥の有無を調べて判断すること」である。企業診断は一般的には「診断士が企業の実態を判断し,改善策を提示すること」といえよう。企業診断をこの視点から見ると医者と患者の関係に似ている。企業の課題といえる症状は何が原因で生じているのか,その原因を把握し,解決策を考えなければ今後の企業経営にも大きな影響を与える。企業診断の重要な視点は,その場だけの一時的な相談や特定部門のコンサルティングではないことである。本書は,中小企業経営を中小企業診断士や経営の専門家などの現実の中小企業診断の経験を通して,改めて中小企業にとっての経営とは何かまたどう改善するかをまとめたものである。中小企業経営に関する書籍はどこの書店でもよく目にする。しかし,本書のように中小企業診断士が診断の視点からまとめたものは少ない。本書の特徴は理論を前提しつつも実務的視点からの研究書である。本書の読者対象として重視するのは,中小企業経営者である。中小企業経営者にとって自社の経営を別の視点から見ることになる。大学での経営学学習の機会の増加や金融機関や支援機関等の情報提供の活発化などにより知識は増えているが,自らの経営を客観的に見る機会は決して多いとはいえない。是非自社の経営を診断士等の外部専門家から見ればどのように見えるのかを自社の経営に当てはめて考える機会として欲しい。第2は,始めて経営学を学ぶ人だけでなく,経営学を学んだことがあり,中小企業の経営に興味を持っている学生である。経営者や学生については上記の通りであるが,最も期待しているのは,全国の中小企業診断士やこれから診断士を目指そうと考えている方々である。診断士は経験が絶対的に重要である。しかし,現在その経験する場が非常に少ないといわざるをえない。本書は診断を実践するために欠かせない視点を意識している。
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