本研究の出発点となった素朴な問題意識は,「教師(teacher)は,教師としての力量(competency) を,いかなる場で,いかなることを契機として,いかなる具体的内容のものとして,形成していくのであろうか?」という点にある。これを端的に「教師は,教育専門家としてどのように発達(development) していくのであろうか?」と言い換えてもよい。
本研究は,1970 年代に社会学,とりわけ家族社会学の分野で,新たな研究手法として取り入れられ,盛んとなってきていた「ライフコース(life-course:この概念の説明は後述)」研究の手法に学び,教師研究にも取り入れることによって上記の自問に自答しようとし続けてきた。本書は,そうした筆者〔山崎〕のライフワークの一つとなった研究,すなわち「ライフコース・アプローチに基づく教師の発達と力量形成に関する研究」の最終報告書である。
目 次
序論部 研究の目的・課題・構成
序 章 研究対象の性格と分析枠組
第1 節 教師の仕事とライフコースの特性
第2 節 研究対象の複合的性格から導き出される分析枠組
第1 章 調査の実施概要と回答者の属性構成等
第1 節 質問紙調査の実施概要
第2 節 インタビュー調査の実施概要
第3 節 回答者の属性構成等
第4 節 調査の実施と倫理的配慮
第2 章 戦後日本における教師と教師教育をめぐる時代状況
――調査対象者たちのライフコースの舞台――
第1 節 〈再生と揺籃〉期の「戦後新教育世代」教師層:
第1-3GC(1945-1964)
第2 節 〈紛争と変動〉期の「学園紛争世代」教師層:
第4-6GC(1965-1979)
第3 節 〈管理と停滞〉期の「共通一次試験世代」教師層:
第7-9GC(1980-1994)
第4 節 〈混迷と模索〉期の「教員採用減少世代」教師層:
第10-11GC(1995-2004)
第5 節 〈競争と統督〉期の「学校現場体験世代」教師層:
第12-13GC(2005-2014)
本論部 ライフコースの変容
第3 章 教師と教師教育の現況と今日的特徴
第1 節 教師と教師教育の現況
第2節 形骸化されてゆく「大学における養成」原則
第3節 変質化されてゆく「免許状主義にもとづく開放制」原則
第4節 狭隘化されてゆく「現職教育の尊重」原則
第5節 溶解化されてゆく「専門職性の確立」原則
第6節 「一体」化が進む大学と教育行政
第4 章 教職生活の変容
第1 節 生活時間
第2 節 子ども・同僚との関係
第3 節 困難と危機
第4 節 発達と力量形成の場と内容
第5 章 教職意識の変容
第1 節 教職観の変容
第2 節 教職イメージの変容
第3 節 教師教育観の変容
第6 章 「転機」と「選択的変容型」発達
第1 節 統計的考察:「転機」とそれを生み出す諸契機
第2 節 事例的考察(その1):1 人の50 歳代教師
第3 節 事例的考察(その2):4 人の30 歳代後半〜 40 歳代教師
第4 節 事例的考察(その3):4 人の20 歳代教師
第7 章 教師の<実践知>
――ライフコース・アプローチにもとづく析出の試み――
第1 節 <実践知>の視野
第2 節 <実践知>析出の試み(その1):
――ライフコース・インタビュー調査より――
第3 節 <実践知>析出の試み(その2):
――ライフコース・質問紙調査より――
結論部 教師と教師教育の変容と展望
第8 章 教師と教師教育の変容
第1 節 世代別教師層におけるライフコースの変容
第2 節 年齢段階別教師層におけるライフコースの変容
第3 節 教職における生活と意識の変容
第4 節 教師の発達と力量形成を支え促す「発達サポート機能」の変容
終 章 教師教育改革の展望
第1 節 今後の教師教育改革をめぐる論点と課題
第2 節 オルタナティブな改革展望
あとがき
、本の検索、教育学
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