先日、私宛に『コドモ新聞社』を購入した読者から、「最近、小熊秀雄が“転向者”とあちこちで書かれていますがどう思いますか？」　との主旨のメールをいただきました。そのことに対して次のような返信を書きました。

M様　　　　　　　　　　　　　　　　　　創風社　高橋

　小熊秀雄の思想を確認するのにもっとも充実した内容の文献は『小熊秀雄全集』創樹社だと思います。古本屋にいけば、全５巻で２万円くらいで入手できると思います。（ちなみにこの本は毎日出版文化賞を受賞しています。）また、小熊という人物、思想をコンパクトに自伝的にまとめたものとして、岡田雅勝著『人と作品　小熊秀雄』清水書院（680円）がおすすめできると思います。その中で、教条的なマルクス主義には共鳴していない、小熊独自の思想的スタンスを確認できると思います。創風社では『小熊秀雄童話集』、『小熊秀雄詩集』を発行しています。童話集のあとがきでは、戦前の様々な文化人との交流が確認できると思います。
創風社のWebページで朝日新聞に掲載された書評も見ることができます。
　大塚英志氏が「小熊は転向者だ」という発言の根拠となる宮本大人氏の論文を私は直接確認していませんが、大城のぼる画・作『愉快な鐵工場』小学館クリエイティブの付属読本の宮本大人氏の論文が判断の参考になると思います。そして創風社では、昨年12月に
小熊秀雄作『不思議な国　インドの旅・勇士イリヤ』を発行しました。その中には、全集にもありますが、「子供漫画論」が収録されています。
　以上のような文献を参考にしながら、小熊秀雄の活動の全体像をとらえた上で、「転向者」といわれている小熊秀雄の人物、思想を適切に判断していただきたいと思います。

　その他、出版物について、なにかご質問があれば、答えられる範囲で答えていきたいと思います。公開する価値のあるものは今後もHPに載せていきたい。そんな風に思っています。

06年2月15日