創風社では今、『ドイツ福祉国家の変容と成人継続教育』の編集、製作作業にとりかかっています。高橋満氏の前作『社会教育の現代的実践』に続く第2作目となります。この本は、前著が日本での現場実践が中心に報告されているのに対し、日本の現場実践に参考になりうるドイツの現場実践、社会教育制度、社会教育理論を紹介した本だと現段階ではそう私は理解しています。この本の精読に入る前に、自分にとってなじみのあまりない社会教育に対し、改めて前著の内容理解を深めようと思っているところです。
現段階では私は社会教育という仕事を次のようにとらえています。公的に “子育て、コンピューター、語学、歴史、生け花、琴.etc.”の市民講座の企画をすること。そして、教育委員会などにかけあって、社会教育にかかわる制度を変更したりつくっていくこと。そんなふうに理解しています。そして、前著では満氏は、社会教育者としての実践報告の一つとして、塩釜〔宮城〕の外国人労働者たちにたいする市民教育を挙げ、内容に対して詳しく報告しています。
都市部では、市民講座を受講できる場所として、カルチャースクールなどの民間講座が充実しています。しかし、満氏の話によると、地方では、公民館くらいしか、市民講座を受講できる場所はないそうです。世の中の流れは、社会教育で行われるような市民講座は民間委託をしていくという状況にあると聞きますが、公から民への委託が進むと、都市部に対し、市民教育における文化水準格差がますますひろがることにつながると思います。しかし、社会教育だからこそできる地域を豊かにする具体的実践例がこの本に書かれています。
社会教育に対する国の制度変更が都市近郊を中心とした現場実践に基づきつくられていることに対し、この本は、地方の立場から現場の具体的実践例を挙げ、社会教育の重要性を伝えています。
創風社は、東京にありますが、私も、両親も生まれは東北地方なので、地方のニーズに目をむけた研究活動を今後も積極的に応援していきたいと思っています。そんなことを考えながら、『ドイツ福祉国家の変容と成人継続教育』の製作、編集、精読に向かおうとしている最中です。ドイツの社会教育実践は日本の社会教育とどこが共通して、どこが違うのか、そして、どんなところが参考になりうるのか、そんなことを頭に入れながら、原稿に向き合おうと思います。