選択的後根遮断術は欧米では比較的以前よりよく行われている術式ですが、日本においてはまだ新しい方法であり、欧米と比べると症例数も少なくその評価に関してもこれからというのが実状です。術式に関してもいくつか報告されておりますが、当科では低侵襲での術式を採用しており、それぞれの方法と比較検討し、最後に症例を1例提示したいと思います。(※詳しい術前術後の様子は創風社のHPを参照してください。)
次に合併症ですが、術中の合併症として喘息発作。術後は排尿障害、髄液漏からの感染、髄膜炎等も挙げられますがやはり術後問題となるのは強い瘡部痛であり、また長期的で最も起こりうる深刻なものとして脊椎の変形と感覚障害が挙げられます。 それぞれの術式に関してです。 まず通常のSDRですが、この方法の利点としてはやはり視野を十分確保でき、rootを正確に同定できることにより、その支配領域を確認しながら行える事、S2も正確に同定できるため膀胱直腸障害が出にくいこと、などが挙げられます。しかしlaminectomyや硬膜の切開範囲が広い事により術後の感染や脊椎変形が生じやすい事が課題とされます。 次に非選択的後根遮断術という方法に関してですが、これは電気刺激により必ずしも良好な反応が得られるわけではなく、そうした場合後根を刺激とは無関係に非選択的に遮断するといった方法です。これによると術後の効果は選択的に行ったものと同等との報告がありますが、やはり術後の合併症は同様のものがあります。 更に別の方法として限局性の後根遮断術といったものが挙げられます。これはlaminectomyも限局して行い、切断するrootもL4-S1だけ、もしくはL5、S1だけに限局するといった方法です。これはrhizotomyのdistant-effectを期待するものであります。この方法では術後の感覚障害の危険性も当然低く、又laminectomyも限局しており、術後の脊椎の変形に関しては特に問題になりません。しかし痙縮の程度には個人差が大きいという事があり2-level,3-levelの後根遮断だけではその効果への影響も今後の課題とされます。 こちらは当科で行っている方法ですが、限局したlaminectomyを行い、後は同様に刺激を用い選択的に後根を遮断するといった方法です。この方法では術後の脊椎変形はほとんど問題になりません。又電気刺激を用い反応を確認しながらL2-S1まで十分に遮断する事も可能です。弱点としてはrootの同定がL1だけしか行えない事ですが、それによる不都合は特に認めません。というのも筋緊張の緩和という点では神経根を1本1本同定する必要性は少なく、全体的なrhizotomyが重要である事によります。又S2の確認を正確には行えない事による膀胱直腸障害の可能性も挙げられますが、S2のrootは解剖学的に大体同定可能であり、又術中膀胱内圧を測ることによってもこれを確認する事ができます。術後の合併症が低いのは勿論の事です。
効果に関してですが、こちらは皆さんご存知のとおりです。姿勢や関節運動域の拡大、歩行の上達、さらには知的レベルの拡大といったことも期待できます。
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